月刊てあて「特集」

今月の特集

2017年1月10日<89号(2017年1月)>

新春企画・たくさんの感動をありがとう!

  • 〜 在宅マッサージにまつわる感動体験!〜

一通の手紙

一通の手紙

F様は、私がどれほど励まされたか気づいていないでしょう。
私の母ほどの年齢で、多内臓の病気を患われており、下肢の浮腫や易疲労感、食欲減退等多岐に渡る症状に悩まれていました。
ある日、心臓手術の為に入院され、当初の予定を過ぎても連絡が無し。郵便物の添え状の隅にお手紙を書きました。
「近くを通るたびに、どうしているかなと考えます。くれぐれもお体を大切にお過ごし下さい」すると、なんとお返事を下さいました。
「こずえさん、気にかけてくれてありがとう。只今、人口呼吸器の為に声が出せず、連絡が遅くなってごめんなさい。早く良くなるように祈っててね〜(ハート)代筆 夫」
私は、涙が溢れました。
まさか人工呼吸器を使用するほどの大手術に、半年に渡るリハビリに耐え…そんな状態でもお返事を下さる優しさに、精神力の強さに胸が熱くなりました。
無事に退院され「手紙を貰って涙が出たわ」と話されるF様に、「私もです」と笑いあえる日が来たことが、本当に嬉しいです。
少しでも疼痛を緩和出来るよう全力を尽くします。そして、素敵な笑顔がずっと続きますよう、祈っています。

てあて在宅マッサージ福島/本田こずえ

壊れたケトルと嘘つき施術者

壊れたケトルと嘘つき施術者

年末になるといつも思い出す患者様がいます。入社すぐに担当したK様(八十代の女性)です。
K様は博識で頭の回転が速く、歴史話や時事ネタをにこやかに話される穏やかな方でした。
施術が終わるといつも「ありがとうね、また来週ね」
と仰り、私も
「はい、また来週です」
と返すのが通例になっていました。
数年後の春、K様はご自宅で転倒されてしまいました。それを機に、歩行することに対して臆病になってしまい、ベッドで過ごされることが多くなりました。
そこからは早かったです。元々『○○先生』と呼んで下さっていましたが、いつの間にか『あなた』へと呼称が変わり、昼夜の感覚が失われ、同じ会話が繰り返され、失禁が増えました。そしてその年の夏、薬缶を空焚きし小火騒ぎを起こしてしまいました。日中独居だったことが災いしました。ご家族としても一人にしておけず、年明けから施設への入所が決まりました。
その年最後の訪問日、私の訪問も最後となりました。ご家族様からは『入所のことは悟られないようにしてください』とお願いされており、私は一人寂寥感を感じていました。施術が終わるとK様が微笑んで言いました。

「ありがとうね、また来週ね」

「……はい、また来週です」

てあて在宅マッサージ相模原/三ツ木健朗

「ありがとう」

「ありがとう」

約三年前、てあてに入社して間もない頃に担当することになったSさん。仙人の様な風貌(職業は画家?)口数は少なく、出る言葉は「大丈夫」「もういいよ」「ありがとう」くらい。重度の糖尿病で週三回の透析のせいか、身体はいつも気だるそう。訪問するとベッドからズレ落ちたような格好で、両膝を曲げてテレビを見ているか、寝ているか。相撲が好きで、稀勢の里関の取り組みだけは目を見開いていました。
施術は主に股関節と膝関節の可動域の維持・拡大。そのために行うストレッチでは痛みを感じさせてしまうと「もういいよ」と終了。そのため、施術中は常にSさんとにらめっこ状態、眉毛をひそめたら慌ててストレッチを緩める。という毎回シーソーゲームのよう。そんな緊張感の中での施術に、私自身「Sさんに効果的な施術が出来ているのか?」「果たして、施術自体を喜んで貰えているのか?」というジレンマに陥っていました。しかしなぜか訪問が中止になることはありません。いつも「もういいよ」と言われ施術が終わり、「Sさん、また来ますね」と声をかけると小声で「ありがとう」と軽く手を挙げて応えてくれました。そんな最中に入院、そして翌日に突然のご逝去。コールセンターからの連絡を受けた時、気づいたら不思議と涙が溢れ出ていました。
新人施術者として沢山のことを学ばせていただきました。今は天国のSさんに「ありがとう」を伝えたいです。

てあて在宅マッサージ松戸/西村剛

「天寿を全うする」ということ

「天寿を全うする」ということ

最期を迎えられた患者様に、印象的な方がおられます。
九十代後半の男性の患者様。身の回りの事はご自身でされ、お話し好きな方でした。あるとき改まった口調で「そろそろお別れの時が近付いてきたようです。今までお世話になりました」と仰るので、驚き、娘様に伝えると「最近家族にも同じような事を言っているんです。何か予感がするんでしょうかね?」と。お元気なのでまさかと思いましたが二週間後、娘様から「昼寝中に静かに息を引き取りました」とのご連絡を頂きました。

もうお一方は、教師をされていた九十代女性の患者様。
難聴のためご家族があまり話し掛けてくれない事を寂しがっていました。施術中は教師時代のエピソードを沢山聞かせてくれました。風邪をひいてマッサージを休んでいた時、娘様から「お顔を見たいと言っているので来て頂けますか?」とのお電話を頂きました。
訪問し「早く元気になってください」とお伝えすると「お会いできるのは今日が最後だと思います。今までありがとうございました」と仰いました。その方もその後間もなくご自宅で静かに永眠されました。
お二方ともご自身の最後を見極め旅だって行かれましたが、『天寿を全うする』とはこういう事なのだと思い今でも強く印象に残っています。

てあて在宅マッサージ浦和/吉光寺純子