「最後の希望」

 〜施術師の可能性〜


 松戸院/施術師 川田勇次
 会社研修会(2013年11月3日)での感動体験発表会より

 phoyo01■Aさんとの出会いで、施術の考え方が大きく変わった。


phoyo01
 ▲会社研修会(11/3)での感動体験発表会より

 肝臓ガンの末期、全身転移、余命宣告を受けて自宅でのターミナルケアを余儀なくされているAさん。
酸素を導入、手足が少し動かせるだけの状況。マッサージの目的は、寝返りもできない背腰部の疼痛緩和と両下肢浮腫の軽減。
あるとき…
 「ねぇ先生、最後にもう一度自分の足で立ちたい。最後に自分の足で歩きたい」と打ち明けられた。 立つなんて、まして歩くなんて…無理ですなんて言えない。返す言葉が出なかった。
 「そうですか…」。本人の最後の希望なのに、何もしてあげられない。無力な自分。

 最後の希望を叶えてあげたい

 院長に相談した。結論が出た。「目標に向かって少しずつ出来る事をしよう」「無理させないように、意欲を維持しよう」。
 その日から、立位に向けた訓練を少しずつ始めた。すぐに呼吸が乱れてしまう。少しずつ少しずつ出来ることを継続した。そのうち、体が動かせるようになり、起き上がれるようになった。端座も安定。しかし、腹水が更に増えてきていた。辛かったと思う、でも弱音は吐かない、本人はあきらめていなかった。手引きによる立ち上り、全介助による立位。訓練を続けた。
 そして、ある日、とうとう自分の力でしっかり立つことができた。
 「先生、できた!」
    「やりましたね!」
 今まで見せたことのない、満面の笑顔のAさん。喜びと感動を共有した瞬間。やがて自立歩行もできるようになり、本人の希望は叶えられた。

 この体験から得たもの

 患者さんには、いろいろな病があり、病と共に過ごしている。我々マッサージ師は、病気を治すことはできないかもしれない。だからといって何もできないわけではない。患者さんに寄り添い、多くの事ができると知った。多くの可能性があることを知った。喜び、悲しみ、感動、を患者さんと共有できる。ベットサイドに一番近い医療マッサージだからこそ、出来ることがある。Aさんの、あきらめない強さを忘れないで、これからも自分に与えられた役割を果たしていきたいと思う。

phoyo01
 ※施術イメージ写真


感動体験レポート
会社研修会/感動体験 2013年11月3日発表会より抜粋