|
2019年10月 122号
笑顔が明日への希望に繋がって
■担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ松戸 川田勇次 ■レポート/てあて在宅マッサージ松戸 相談員 玉城さや香 |
T.M君は、2000年1月生まれの19歳。お母様がT君の身体に異変を感じたのはまだ幼い2歳の時でした。はじめは脳性麻痺を疑われたものの、半年後に告げられた病名は『パントテン酸キナーゼ関連神経変性症』という、自分の意志では体が動かせなくなる神経系疾患でした。当時、日本では一人も症例のない病に、ご両親は右も左もわからないまま、今日まで一生懸命に向き合い続けています。
|
|
|
|
▲日々確実に成長しているT君。最近では力も付いてきて自慢の腕の筋肉を見せてくれました。 いつもそばで寄り添うお母様のTさん、在宅マッサージを始めた当初から8年間担当しているマッサージ師の川田勇次と。 |
|
|
名前の知らない病 |
|
|
大好きなぬいぐるみに囲まれ、いつも屈託のない笑顔で迎えてくれるT君は、2歳の時にパントテン酸キナーゼ関連神経変性症という、まだ日本では難病指定にもされていない病を発症。それは、全身の筋肉の緊張により徐々に手足の自由が奪われていく病気で、薬を使って症状を緩和しながら生活を送っていました。
しかし、次第に歩行や食事もままならなくなり、8歳の時には、7カ月もの入院生活を送りました。「病院から帰ってくると、生活はがらりと変わり、その後は本当に目まぐるしい毎日でした」とお母様はいいます。
これといった治療法もない中、リハビリ施設を探していた時、福祉関係の広報誌の案内を見て在宅マッサージを知りました。マッサージでこわばった体をほぐし、自分では動かせない体の関節を曲げたり伸ばしたりする運動を行うので、体の負担を軽減してリハビリの助けになっているといいます。
|
|
|
「どんな時もいつも笑顔でいてくれるんです」/(母) |
|
|
|
|
|
▲いたずら好きなT君。施術で体が楽になるのがわかるので、終わりそうになると体に力を入れて「まだ終わってほしくない」とアピールをしたり、時には足を動かして「バイバイ」もしてくれます。週2回のマッサージでは体の状態が維持され、尖足等拘縮防止にもなっています。
小学校の時は運動会など季節の行事をたくさん楽しみました。
千葉の人気キャラクター「ふなっしー」が大好き。そんなT君の為にお家の外観をブルーと黄色のふなっしーカラーにされたそう。「夢はふなっしーに会うこと」。
|
|
|
家族で支え合い逞しく成長 |
|
|
日本で症例のない病をお父様は、学会の論文などあらゆる資料を必死に調べました。体が小さい頃は、T君を連れてアメリカにも渡り、世界中から集まった同じ病の方達と情報交換をするなど、ご両親は病気と向き合いながら献身的に支えていきました。
現在、T君は養護学校を卒業し生活介護施設に通っています。気管切開で前のように食事ができない分、散歩やプールなど、今できることを楽しんで気持ちをリフレッシュしています。
来年には二十歳の成人式を迎えます。未だに治療法は見つかっていませんが、家族の力強い愛に包まれ、いつも笑顔を絶やさないT君の姿は、どんな時も前向きに生きる勇気を与えてくれます。
|
|
↑TOP