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2014年5月 57号

新しい人生だと頭を切り替えて

■担当マッサージ師/中央在宅マッサージ 所沢院 佐野 貴志
■レポート    /中央在宅マッサージ 相談員 間 明日香


 K・Wさん(70歳)は、脳梗塞による右半身麻痺と失語症とともに生きて5年目になります。不自由な身体に加え、言葉を失うという苦しみは、患っているご本人しか本当には理解できないものなのかもしれません。失語症全国大会「東京多摩大会」の実行委員長として、今を強く生きるWさん。そこには鋼のような精神力とあふれる勇気があります。
 
  ▲失語症という病気を正しく社会に認知してもらいたいと活動を続けるWさん。今年の全国大会のコングレスバッグは、Wさんの版画作品をプリントしたものです。力強く鳴く2羽の鳥に、失語症患者の思いが込められています。 ※本日の担当マッサージ師 佐野貴志と。

 今までとは違う人生

  躍動感と独創性に満ちた版画、自然の中の風景をそのままに、美しい色彩で描いた絵画…。かつては右利きだった渡邊さんが左手で制作した作品には、息をのむような迫力があります。
 「突然、言葉ができなくなって、字も書けなくなりました。身体も動かないから外にも出られない。絵しかなかったんです。最初は左手でペンを持つのもたいへんでしたよ」と話す朗らかな表情には、大きな喪失感と葛藤を乗り越えてきた強い心が宿っています。
 「今までの人生とまた違う人生だと、頭を切り替えました。昔の自分と比べていたら、新しい自分がダメになるから」。


▲病気発症後、すべて左手で描いている絵画と版画。隠れていた才能が病気をきっかけに発掘されました。これらの作品で毎年、カレンダーをつくってお世話になった方に差し上げています。
 
 
 

 嘘のつけない仲間たちと、
 良い人生を生きているなって/Wさん


ノートには自作の詩がたくさんつづられています。失語症がどんな病気なのか、患っている人の心の痛みや想いが伝わってきます。(写真右)昨年末にカレンダーを配ったときにつけた挨拶状です。
「言葉の回復とともに、身体も少しずつ回復してきています。 でも、まだまだ時間が必要です」とWさん。  

 嘘のつけない仲間と

 

 Wさんは、身体機能回復させるリハビリと、言葉を取り戻す言語療法にも懸命に励んでいます。また、「若竹会」という失語症の友の会にも参加。15人ぐらいのメンバーで、料理をしたり、旅行や花見をしたり、寸劇を練習したりしています。
 「若竹会」のような友の会が全国にあり、年一回、全国大会を開催します。29回目にあたる今年は、東京多摩地区での開催になり、その実行委員長をWさんが担っています。
 交流を深め情報交換をしながら、失語症患者に必要なことは何かなどを話し合います。
 「病気をしてからのほうが、友達が増えて社会が広がりました。しかも、みんな言葉を出すだけで精一杯だから、嘘をつくなんて難しいことはできない。嘘のつけない仲間たちと、良い人生を生きているなって。そう思うと楽しくなります」とWさん。
心を開き視野を広げ、可能性に満ちた未来を見つめています。
 

 リハビリにも懸命に励んでいます

▲厚い本2冊と板でつくった道具は、作業療法士の手作りで、朝晩、鏡を前にしてここに立ち、麻痺側に気を付けながら左右のバランスを見ます。
 
▲右手のリハビリの時に使う段ボール箱。真ん中に鏡があり、脳に右手を動かしていると錯覚させます。弟さんと友人たちがつくってくれました。  
 

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