2017年6月 94号一歩無理してやれば二歩になる■担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ 福島院 菅野 弘明 |
福島県福島市立子山。自然豊かな山々に囲まれ、春風がそよ吹く高丘に、K・Tさん(59歳)のご自宅はあります。
人生には予期せぬことが起きるもの。Tさんを脳出血という病魔が襲ったのは55歳のとき。瓦ぶき職人として、働き盛りだったTさんは、その困難をどう乗り越えてきたのでしょうか。多くを語らない、優しいまなざしの中にその答えがありました。
▲ 「もともとは右利きだったんですが、今は左手一本で大体のことはできるようになりました」。 今日もマッサージも終えてほっと一息。在宅マッサージは今後も続けていきたいというTさん。担当マッサージ師、菅野弘明と。 | ||
生粋の職人気質Tさんは、瓦ぶき一級技能検定の資格を持ち、建物の修繕もこなす根っからの職人です。 「中学生の時、すぐ近くに瓦屋さんがあって、そこの親方がすごく面倒見がよくて、学校帰りによく手伝いに行っていたんです。お小遣いもくれたりしてね…」と、懐かしそうに話します。 その後、専門学校で板金加工を習い、地元の工場で職人として働き始めました。 でも20歳の時、父親が亡くなったのを機に実家に戻ってきてからは、あの瓦屋の親方のところに弟子入りし、瓦ぶき職人として 年近く務めてきたといいます。 |
▲歩行時はSLB(下肢装具)を着用。 上肢の方は医師のすすめで年3回くらい筋肉の拘縮緩和のためにボトックス注射をしているといいます |
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▲在宅マッサージでは、硬くなっている筋肉の拘縮改善に努めています。「マッサージをしてもらうと血行がよくなって動きもよくなるんです」とTさん。 | |||
「目標は、一日一日が楽しければ、身体が動けばいい」/K・Tさん |
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▲Tさんが15年前に作った広い作業場は、数え切れないほどたくさんの工具があります。 このリハビリ器具は、見ようみまねで製作しました。ご自身で独自に改良して自分に合ったトレーニングを実施しています。 |
一日一日を懸命に平成25年10月25日、その時は何の前ぶれもなくやってきました。「現場で仕事中に3時の休憩のとき、異変に気付き、右手にも力がはいらず、大工さんが『これはダメだ!』と言って、すぐ救急車を呼んでくれたんです」。 入院でのリハビリは5か月にも及びました。「こうなったのは仕方がないこと。あとはどこまで治るか」と、前向きな気持ちになったというTさん。 今では、左手で日常の大体のことができるようになり、通所リハビリでは、他の患者さんの装具の着脱を手伝ったり、診療所の建物など、どこか直すところがあれば手を加えたりと、親方ゆずりの面倒見の良さも伝わってきます。 「職人は一人でやっていても、仲間との助け合いがなければやっていけない。人が困っている時は手を差し伸べる。お互いさま」とTさんはいいます。 何よりもリハビリに取り組むTさんのその根底にあるものは、「家族に迷惑はかけられない」という、強い意志とやさしさ。 そんな意欲的でひたむきな姿は、多くの人に勇気とパワーを与えています。 |
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