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2019年9月 121号

悔し涙を笑顔に変えて

■担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ昭島 笠野浩平
■レポート/てあて在宅マッサージ昭島 相談員 佐々木明美


 K.Iさん69歳は、まだまだ働き盛りの59歳の時に脳梗塞を発症。倒れたのは奇しくも10年前の勤労感謝の日でした。右半身麻痺となり、体も動かせない、言葉も話せない状態から杖をついて歩けるようになるまで回復できたのは、奥様とともに歩んだ10年の日々の積み重ねがあったからです。

 
  ▲「病気で倒れてからは食べ物の好き嫌いがなくなり、それまで一切食べなかった野菜が大好きになりました」とKさん。本日の施術を終えて、奥様とマッサージ師の笠野浩平と。
 

 流した涙を原動力に

 
   振り返れば前兆はあったと奥様は言います。「倒れる数か月前に車庫入れの時に車の右側をぶつけたことが2回あったんです。何十年も無事故だったのに」。
 体の異変に気付いたその日に救急車を呼んで入院。退院したときは、歩くことも喋ることもできない状態でした。
 「車椅子で帰ってきて、本棚のある所に連れて行ってくれと言うんです。本棚の前で自分の好きな本を手にとって、涙をぽろぽろと流したんです」。それは、大好きだった読書がもうできないという悔し涙でした。
せめて本を読めるようにしてあげたいと思い、奥様は仕事を辞め、在宅介護をしながら夫婦二人三脚のリハビリ生活が始まりました。 しかし、最初の頃は、気持ちを強く持っていても、まったく言うことをきかない体との闘いに心がくじけそうになりました。「お父さんがそんなやる気がないなら、もうやめようと言って、泣いたり、怒ったりと、その繰り返しでした」。
 
 

「好きな言葉は『継続』でしょうね。やっぱり」/K.I

 
   
  ▲週2回の在宅マッサージでは、右半身を主に全身のマッサージを行うほか、機能回復訓練や、歩行指導も行っています。昔からスポーツが好きだったというKさん。障害者スポーツセンターとデイケアに週3回通い、そして家では、毎日ストレッチと、立ち座り運動を欠かさずに行っています。「家族にがんばる姿を見てもらいたかった」。そんな思いもリハビリの力になったといいます。  
 

継続は力なり

 
   そんなリハビリの日々をコツコツと継続すること10年。固くなってしまった筋肉や、ハードなリハビリ生活で疲れた体をケアするために8年前から在宅マッサージを始めました。マッサージは体の疲れをリセットすると共に、リハビリのフォローもでき、心も体もリフレッシュできるそうです。  現在では、杖をついて歩行できるまでに回復したKさん。今の楽しみは、スポーツリハビリで始めた卓球や友人と楽しむ麻雀と将棋です。そして、「何より嬉しいのは、大きな声でよく笑うようになったことです」と奥様。 たとえ、日々目には見えなくても、続けることが大きな進歩につながることを、Kさんの笑顔が力強く証明してくれていました。  
   

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