title
2015年10月 74号

不撓不屈(ふとうふくつ)の精神で取り戻した笑顔と元気。


■担当マッサージ師/中央在宅マッサージ 長野院 金子 真菜美
■レポート    /中央在宅マッサージ 相談員 盛田 美由紀


 

 J・Iさんが脳出血で倒れたのは6年前、59歳の時です。定年を半年先に控え、まだまだ続く、長い人生を謳歌したいと思っていた矢先のことでした。そして当時は、話すことも身の周りのこともまともに出来ない、ベッドにほぼ寝たきりの絶望の状態から、今の明るい笑顔を取り戻すまで、闘病とリハビリに努めた濃密な年月がありました。Iさんの闘いは今も続いています。

 
  ▲本紙の表紙絵を描いている島崎昌美さんの大ファンというIさん。大学が同じで、デザイン関係の仕事や病気で倒れたことなどご自身の身の上とも重なり、島崎さんの絵と言葉に励まされてきました。人生のパートナーとして常に寄り添ってくれる奥様のMさんにも感謝の日々です。(担当マッサージ師、金子真菜美と。)

   

最初は「ダメ」の繰り返し

 花や果物、動物などを題材にした美しい絵が壁にいっぱい飾られたリビングルームが、Iさんの生活の中心です。掃き出し窓からはウッドデッキが張り出し、車椅子でも気軽に出られるようになっており、その先には、奥様と一緒に丹精込めて作った庭が広がっています。
 絵は、Iさんが毎日リハビリのために、最低1時間かけて左手で描いているものです。右半身麻痺の後遺症を残しながら、ここまでのことが出来るようになるまでには、想像を絶する苦労と努力を重ねてきました。
 「作業療法士にすすめられ、エンピツを持ったのは倒れてから1年後です。その時は、まだ左手に力がまったく入らなくて、線もニョロニョロで……。うまく描こうとも、ほめてもらおうとも思っていませんでした。ダメだ、ダメだの繰り返しでした」。

▲倒れる前は、右手で水彩画を描いていました。
今は左手で色エンピツやクレヨンを使って描いています。
キャベツの絵は奥様のお気に入りです。
 
 
 
▲リハビリ中心の中で、効果的にマッサージの施術を行っております。倒れる前は、スキーやゴルフなどスポーツを楽しんでいたため、筋力は比較的安定しています。 ▲リハビリの奇跡を収めた一冊。ページをめくると、描き始めた当時の絵もあり、まさにIさんの闘いの日々がそこにはあります。  

「辛い思いで続けたリハビリとしての絵が、今は、生き甲斐と言えるまでに…」

 

 左手が生んだ生き甲斐

   
 Iさんは、武蔵野美術大学を卒業し、東急百貨店でデザインと広報に関わる仕事に携わってきました。奥様のMさんとは、同期入社で出会いました。
 「デザイナーを目指していたので絵の勉強はしてこなかったのですが、先日、大学時代の友人に、『学生のときよりうまい!』って言われました(笑)」。
 辛い思いで続けてきたリハビリとしての絵が、今は、生き甲斐と言えるまでになりました。
 絵を描くことだけではありません。当初は奥様の介助に頼りきりだった食事や歯磨きなどの身の周りの事も、一つひとつ乗り越えて出来ることを増やしてきました。
 「週3回、デイサービスで腹筋500回もこなしています。アスリートなみでしょう」と、笑うIさん。その明るさの中に、不撓不屈(ふとうふくつ)の精神が宿っています。
 

▲ご家族やたくさんの友人に囲まれた写真から、Iさんの幸せな人生が垣間見えます。
 
 
 

↑TOP

contents バックナンバー
  2009.08.01号  2009.09.02号
2009.10.03号  2009.11.04号
2009.12.05号  2010.01.06号
2010.02.07号  2010.03.08号
2010.04.09号  2010.05.10号
2010.06.11号  2010.07.12号
2010.08.13号  2010.09.14号
2010.10.15号  2010.11.16号
2010.12.17号  2011.01.18号
2011.02.19号  2011.03.20号
2011.04.21号  2011.05.22号
2011.06.23号  2011.08.24号
2011.09.25号  2011.10.26号
2011.11.27号  2011.12.28号
2012.01.29号  2012.02.30号
2012.03.31号  2012.04.32号
2012.05.33号  2012.06.34号
2012.07.35号  2012.08.36号
2012.09.37号  2012.10.38号
2012.11.39号  2012.12.40号
2013.01.41号  2013.02.42号
2013.03.43号  2013.04.44号
2013.05.45号  2013.06.46号
2013.07.47号  2013.08.48号
2013.09.49号  2013.10.50号
2013.11.51号  2013.12.52号
2014.01.53号  2014.02.54号
2014.03.55号  2014.04.56号
2014.05.57号  2014.06.58号
2014.07.59号  2014.08.60号
2014.09.61号  2014.10.62号
2014.11.63号  2014.12.64号
2015.01.65号  2015.02.66号
2015.03.67号  2015.04.68号
2015.05.69号  2015.06.70号
2015.07.71号  2015.08.72号
2015.09.73号  2015.10.74号
2015.11.75号  2015.12.76号
2016.01.77号  2016.02.78号
2016.03.79号  2016.04.80号
2016.05.81号  2016.16.82号
2016.07.83号  2016.08.84号
2016.09.85号  2016.10.86号
2016.11.87号  2016.12.88号
2017.01.89号  2017.02.90号
2017.03.91号  2017.04.92号
2017.05.93号  2017.06.94号
2017.07.95号  2017.08.96号
2017.09.97号  2017.10.98号
2017.11.99号 2017.12.100号
2018.1.101号 2018.2.102号
2018.3.103号 2018.4.104号
2018.6.105号 2018.6.106号
2018.7.107号 2018.8.108号
2018.9.109号 201810.110号
201811.111号 201812.112号
2019.1.113号 2019.2.114号
2019.3.115号 2019.4.116号
2019.5.117号 2019.6.118号
2019.7.119号 2019.8.120号
2019.9.121号 2019.10.122号
2019.11.123号 2019.12.124号
2020.1.125号 2020.2.126号
2020.3.127号 2020.4.128号