月刊てあて「特集」

今月の特集

2010年8月1日<13号(2010年8月)>

障害にも病気にも負けないあるがままの人生を。

  • 担当マッサージ師/中央在宅マッサージ座間院 三ツ木健朗
  • レポート/中央在宅マッサージ相談員 川島健一

神奈川県大和市にお住まいのT.Tさん(89歳)は、40年以上前に事故で右足膝上を切断。義足を装着しながら仕事も生活もこなしてきました。定年後に始めた趣味の写真撮影では、全国各地を一人で車で巡り、定期的にグループの展示会を開催し、数々の賞も受賞。現在は、写真サークルのまとめ役をしながら、写真と俳句・川柳・文章をコラボレーションさせた展示会の開催にと忙しい日々を送っています。2年前には脳梗塞症で入院されましたが、その後遺症も感じさせないほどの前向きなパワーに、お会いするたびにいつも元気なパワーをもらいます。

障害にも病気にも負けないバイタリティ

障害にも病気にも負けないバイタリティ
「やる気があっても、身体がいうことを聞かない日はありますよ」とTさん。現在準備中の展示会は、大和市写真協議会主催で10月5日~10日まで行われる。『写真:俳句:短歌:文章』展。施術後やさしく見守る奥さまのKさん(92歳)と。

「勤めていたころより今のほうが忙しいんですよ」とT.Tさんは言います。
趣味の写真は定年後から没頭。義足ながらも車の運転をなんなくこなして全国各地を巡り、いくつもの写真展で入選を果たしてきました。現在準備中の展示会は、大和市の写真団体のメンバーの作品の中から108枚の写真を選び、それに合う俳句や短歌、文章をコラボレーションし一つの作品にしていきます。
 「写真は展示会が開催できますが、俳句や短歌をされる方々はなかなか表に出す機会がないので、とても喜ばれているんです。今回は第四回目で、毎回300人以上が会場に訪れました」。
 障害も病気も感じさせないバイタリティーは、持ち前の行動力と強い精神力から来ているのでしょうか。
 「そうだね。身体の調子がいいといつも脳梗塞のことを忘れているよね」と笑います。

右足を失っても失っても車が乗れたし、脳梗塞も後遺症があまりないし。ぼくは、いつだって悪運が強いんです/T

右足を失っても失っても車が乗れたし、脳梗塞も後遺症があまりないし。ぼくは、いつだって悪運が強いんです/T
在宅マッサージは週2回。「楽しみで楽しみで、1年間休んだことがないね。その日の施術が終わると、もう次が待ち遠しくなっているんです」

自然に人や仲間が集う忙しくも豊かな人生

自然に人や仲間が集う忙しくも豊かな人生
Tさんの作品の数々です。カメラを通して、たくさんの友情が育まれ、これまで見えなかった世界が見えてきました。

脳梗塞症を患ってからは車の運転はできなくなり、外出はもっぱら電動車椅子になりました。銀行や郵便局、ショッピングにも一人で行きます。最近は障害者への視線が変わってきて、どこに行っても助けてくれたり、言葉をかけてくれるようになったそうです。
 写真仲間が大型の車で迎えに来てくれて、撮影に連れて行ってくれることもあると言います。
「お弁当まで作ってきてくれて、ありがたいですよ」。
 Tさんてらいのない人柄に、たくさんの人が自然に集まって、心温まる時間を紡いでいるように思えます。
「右足を失っても車が乗れたし、脳梗塞も後遺症があまりないし。ぼくは、いつだって悪運が強いんです」と笑う眼差しは、少年のような純粋さで満ちていました。