月刊てあて「特集」

今月の特集

2011年2月25日<19号(2011年2月)>

いつまでもときめく心を忘れない。あるがままの今を大切に生きています。

  • 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ座間院 三ツ木健朗
  • レポート/てあて在宅マッサージ 相談員 川島健一

T.Hさん(82歳)は、日記や手紙など書くことが大好きで、もちろん読書も大好き。そして「好きな芸能人は小栗旬!」と、ときどき見せてくれるおちゃめな表情が何とも愛らしい方です。両膝変形性関節症、座骨神経痛、糖尿病などの辛い痛みにも負けず、シルバーカーを押して買い物や散歩に出かけたり、デイサービスにも積極的に通っています。そして、今ある生活を謳歌していらっしゃいます。その若々しさと元気にはHさんならではの理由がありました。

シルバーカーでロマンス誕生?

 シルバーカーでロマンス誕生?
少女のころのままの純粋な瞳がきらきらと輝いて。Hさんの笑顔はいつもとってもチャーミングす。担当マッサージ師、三ツ木健朗と。

「以前、シルバーカーを押して出かけたら、荷物を途中で落としてしまったんです。そうしたら、知らない男性が拾って追いかけてきてくれて。その人が不思議と亡くなった主人にとても似ていたんです」と少女のように目をきらきらと輝かせます。何歳になっても、何かにときめく心、それがHさんの若さと元気の源なのかもしれません。
 書くことが大好きで、夜11時、12時になっても寝る間を惜しんで書き綴ってきたという日記や手紙は、『花日記』『たんぽぽの小道』という本にまとめられています。
「『たんぽぽの小道』の中に「桜貝」というエッセイがあるのですが、私が学徒動員のころに出会った海軍士官との思い出を綴ったものなんです。娘たちは『またその話?』と笑うんですが忘れられなくて」とにっこり。彼女の中に乙女の心は健在です。

『優しくて頼りになる息子が一人増えたみたいって言えばって』。あっ、本当にそうだって気がつきました!/H

『優しくて頼りになる息子が一人増えたみたいって言えばって』。あっ、本当にそうだって気がつきました!/H
在宅マッサージは昨年の8月からスタート。週2回のペースで行っています。「むくみが取れて楽になりました」とHさん。

山あり谷ありの人生を乗り越えて

山あり谷ありの人生を乗り越えて
左:『たんぽぽの小道』は、遠くの学校で寄宿生活を送っていた娘への手紙を中心にまとめた本です。その中に青春の記憶「桜貝」が収められています。
右:「厳しい面もありましたが、笑顔が魅力的な人でした」というご主人との思い出は、追悼集『白椿』に収めました。

 長崎県の出身で、九州に長く生活されていたHさんですが、ご長男家族と暮らすために、神奈川県相模原市に移ってきました。知らない土地での生活にもすっかり慣れて、今は、息子さんたちとの暮らしや、デイサービスを楽しんでいらっしゃいます。
「月刊『てあて』の取材があるというので、息子に何を話せばいいのか相談したんです。そうしたら『優しくて頼りになる息子が一人増えたみたいって言えばって』。あっ、本当にそうだって気がつきました!」とまたまたおちゃめな表情を見せてくれました。
 大きな戦争を経験し、お兄さんの戦死、戦後の混乱の中で子育て、ご主人との死別…、山あり谷ありの人生を見事に乗り越えて現在82歳。てらいのない生き方が心地よく、その魅力がつきることはありません。