月刊てあて「特集」

今月の特集

2011年4月25日<21号(2011年4月)>

「がんばってください」は好きじゃない。がんばらないでマイペースで!!

  • 担当マッサージ師/中央在宅マッサージ水戸院 鈴木雅大
  • レポート/中央在宅マッサージ水戸院 千田康之

K.Nさんは、昭和56年2月12日生まれの30歳。脳性小児麻痺で生まれ、幼少期から車椅子生活をしています。
25歳からは一人暮らしをスタート。現在は、障害者年金とホームページ作成のアルバイトをしながら、パソコンで詩を書いて個展を開いたり、詩集を自主出版するなどの創作活動にも励んでいます。そこには「障害者ではなく、一人の人間として普通に生きていきたい」というNさんの強い思いがありました。

自由も自己責任もある一人暮らし

自由も自己責任もある一人暮らし
水戸院の施術担当鈴木雅大と。「小さいころは自分だけがなんでこんな思いをするのか、というのがありました。中学生くらいになってようやく、これが自分と受け入れられるようになりました」とNさん。

Nさんが、中央在宅マッサージ水戸院で施術を受け始めたのは平成17年6月、当院にとって
最初の患者であり最年少患者でもあります。18歳まで養護学校の寮で暮らし、卒業して家族の元に帰って来た後に、お母さまが病気で長い入院生活の末に他界。人生30年にして人には言えない苦労やさまざまな経験を重ねてきました。しかし「だからこそ今のぼくがあるんです」と明るく笑います。
 一人暮らしを始めてからは、一人で買い物に行き、大好きなサッカー観戦やコンサートにも積極的に出かけていきます。生のライブには、「障害があるとかないとか関係なく、同じものを共有する同士で一つの空間をつくっている感覚が好き」と言います。それは一人暮らしにも通じ、「自由もあるけれども自己責任もある中で、普通に地域を構成する一人となって生きることが大切と思うんです」。

自由もあるけれども自己責任もある中で、普通に地域を構成する一人となって生きることが大切と思うんです。/N

自由もあるけれども自己責任もある中で、普通に地域を構成する一人となって生きることが大切と思うんです。/N
短いマッサージの間に、男同士の会話に花を咲かせています。「マッサージは心と
体のリハビリ!」とNさん。

がんばらないでマイペース

がんばらないでマイペース
車椅子での生活がしやすいように整えられた部屋。パソコンは生活に欠かせない道具の一つです。

23歳のときから書き始めた詩は、個展を開催するたびに評判となり、詩集『みんなみんなありがとう』を出版するに至りました。3月11日、自宅でパソコンをしているときに東日本大震災を体験しました。「被災地の方に『がんばってください』とは言いたくありません。精一杯がんばっている人には酷な言葉であることを知っているから。がんばらないでマイペースで生きていってほしいです」。
 可能であれば、今後は詩の個展を東京でも開催し、売り上げの一部を寄付していきたいとNさん。障害者という存在を超え、一人の日本人として、今、何ができるのかを真剣に考えて言います。