月刊てあて「特集」

今月の特集

2012年12月1日<40号(2012年12月)>

笑顔の中に秘めた強さ・・・誰よりもやさしくて!

  • 担当マッサージ師/中央在宅マッサージ 昭島院 室谷洋子
  • レポート/中央在宅マッサージ 相談員 長谷部美智子
笑顔の中に秘めた強さ・・・誰よりもやさしくて!
この日、Uさんがお召しのピンクの服が、いつにも増して表情をやさしく映し出していました。マッサージ師の室谷洋子と。

くりくりした目がかわいらしいT.Uさん(88歳)。脳梗塞や変形性膝関節症を患い、両大腿骨頚部骨折後は歩行が困難に。日常のほとんどは車椅子での生活になりました。しかし、ご近所の方にも元気な挨拶を欠かさず、明るい気持ちで毎日を過ごしています。ちぎり絵やビーズワークで作品をつくったり、「美味しいものを食べるのも大好き!」とUさん。その素敵な笑顔の秘密はご自身の中にありました。

「好き」を集めて

「好き」を集めて
息子さんとの会話は、まるで漫才のように楽しく、親子の確かな絆を感じます。上の写真は、相談員の長谷部と。

小さな頃から、生田流のお琴を習っていて、戦争中は兵舎に慰問に行っていたというUさん。
「慰問や発表会のたびに着物をつくってもらえたから楽しかったの。一人娘で、小学生から女学校まで、贅沢はひとしきりだった。きっとわがままだったのね」。
 21歳で終戦。琴をつま弾いていた深窓のお嬢さまも、たくましい妻となり母となり、家族を守りながら戦後の混乱期を必死に生きてきました。そして、老後は同世代の仲良し同士でフラダンスのグループで活動するなど、行動的な毎日を送っていました。
 しかし、2年前に両大腿骨頚部を骨折。足の付け根に人工骨頭を入れる手術をし、3カ月のリハビリを経て、車椅子の生活に。
 「歩けないからなのか足の裏が痛くて、何かの拍子につることもあるので、つらいですね」。他にも、肩こりや足のむくみ、冷えなどがあると言います。
 それでも、ビーズワークやちぎり絵など、自身の中に「好き」を見つけ、明るく元気に生きることにつとめています。
 「本を読むのも大好きです。西村京太郎や赤川次郎などの探偵ものが特に好き。読んでいると本の中の主人公になっちゃうんです」とにっこり。人を楽しませる言葉の才能は本の中から育んできたのかも知れません。

楽しいことはまだまだいっぱい。今もこれからも若いつもりです。/U

楽しいことはまだまだいっぱい。今もこれからも若いつもりです。/U
在宅マッサージを始めて、7ヵ月目に入りました。今ではこの時間が待ち遠しく、また施術師とのおしゃべりも楽しみにしています。

心はいつもあの頃のまま

心はいつもあの頃のまま
Uさんの感性を感じるちぎり絵の作品と、ビーズワークでつくったティッシュケースカバー。

Uさんは広島に原爆が投下された日、爆心地の近くでその日を迎えました。幸運にも一命は取り留めましたが、きっと壮絶な苦労をしてきたのだと思います。
 しかし、その事を昔も今も語ることはありません。心の中にあるのは、生まれ育った台湾でのことや楽しかった少女時代のこと。
 強さの中にある、やさしさや楽しいおしゃべりが、今日もまわりを癒します。