月刊てあて「特集」

今月の特集

2016年8月29日<84号(2016年8月)>

支え合い、実りある人生に

  • 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ 長野院 吉澤 賢一
  • レポート    /てあて在宅マッサージ     盛田 美由紀
支え合い、実りある人生に
マッサージを終えて、気になっていた足の浮腫もだいぶ楽になりました。体がよくなったら何がしたいかと聞いたら「お部屋の模様替えをしたいんです。考えるのは楽しいし、キレイになったところを想像するのも楽しいです」とSさん。後方は、夫のHさん。担当マッサージ師、吉澤賢一と。

S・Oさん(76歳)は、60歳のときにパーキンソン病を発病。その後、難病ともいわれる黄斑病を併発しました。そんなSさんを支えるのは、夫のHさん(79歳)。Hさんご自身も、脊柱管狭窄症という病を抱えながら、介護生活を送っています。お二人の暮らしは、いつも明るい空気に満ちていて「すべてを包み合う、実りある人生」を、日々積み重ねています。

予測のつかない病

予測のつかない病
娘さんからプレゼントされた額は、お二人をうたった詩がつづられています。まぁるい顔で頬を寄せ合うほっこりとした絵も印象的です。

Oさんご夫妻は、現役時代は薬局を経営していました。しっかり者のSさんと、社交的でマジックを趣味とするHさんは、お子さんやお孫さんにも恵まれて、笑顔の耐えない毎日を過ごしていました。そんなとき、Sさんがパーキンソン病を発症……。
「病名を告げられた日、車での帰り道、どこをどう通って家にたどりついたのか、全く分からないほどショックでした」と、お二人は振り返ります。
16年の歳月の中で、Sさんの病は進行し、そして黄斑病という目の難病も併発。一人で歩くことも困難な状態になりました。
「人によって症状の出方も違い、最近は貧血が出て増血剤を投与しています。どうなるか予測がつかない嫌な病気なんです」。

「からだは不自由だ けれども、お互いに 支え合って」Sさん・Hさん

「からだは不自由だ けれども、お互いに 支え合って」Sさん・Hさん
体調の変動が激しいため「体の調子が悪いときほど、マッサージがありがたい」と、Sさん。体の痛みがやわらぎ、心もほぐれていくのを感じます。

夫婦でつむぐ 豊かな人生を

夫婦でつむぐ 豊かな人生を
Hさんは、60歳代で頚椎狭窄症の手術をしてから、頚・腰・足など、合計8回の手術をしました。「補修しながら生きているんです」と笑います。

病気の進行を少しでも遅らせるために、Hさんは、できるだけSさんを外に連れ出したいと思っています。しかし、ご自身も腰を患い、Sさんも疲れやすく、なかなか思うようにできないのが歯がゆいそうです。
「突然、不自由な暮らしになって、それを受け入れるのには、時間がかかりました。しかし、現実を受け入れ、やっていくしかないんです」と、そんな言葉からも、ご夫妻には葛藤の時間があったことがうかがえます。
Sさんの楽しみは、Hさんが毎日、一生懸命作ってくれるお料理をいただくこと。
「私より上手なんですよ。おいしい物がいただけて、あたたかいおみそ汁があって、それで大丈夫って思えます」。
体が不自由になっても、齢を経ても、すべてを包んで前に進む強い生き方がそこにはあります。
実りある人生を、今この瞬間も二人でつむぎ続けているのです。