月刊てあて「特集」

今月の特集

2016年12月19日<88号(2016年12月)>

あるがままの今が幸せ

  • 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ 相模原 森田 温 
  • レポート    /てあて在宅マッサージ 相談員 今成 光子
あるがままの今が幸せ
家族と暮らしているMさんですが、炊事・洗濯は杖を頼りに自分の事は自分でこなしています。
「いずれは、すべて家族の世話にならなければいけないのだから、今は在宅マッサージを続けて、頑張っていこうと思っています」と、Mさん。
担当マッサージ師の森田温と。

M・Iさんは、昭和2年生まれの88歳。
平成25年に脊髄骨粗鬆症による腰椎圧迫骨折で杖をつかないと歩けない状態です。でもなんと今も現役で洋裁や編み物などをこなしていらっしゃいます。
「この歳になっても手が使えて、目が見えて、お裁縫ができる事、それだけでも幸せです」と語るMさん。シルバーグレーの豊かな髪にお人柄を忍ばせる優しい笑顔は、誰からも愛され慕われています。

昭和の職業婦人

昭和の職業婦人
最近は編み物ばかりしていると言います。写真左:かわいい靴下カバー。すでに200足近く編み上げました。靴下カバーは先日「相模大野アートクラフト秋の市」というイベントに出品しました。写真右:ミシンで縫った巾着。

「88歳がまもなく終わろうとしている時に第88号に掲載されるなんて、よい記念になります」とMさん。冷蔵庫も車も、何もない時代に生まれ、小さな頃は身体がとても弱い子だったと言います。
「洋服なんてまだ売っていなかったから、自分で縫わなければいけなかったの。だから当時はめずらしかった洋裁学校に、2年通わせてもらいました」。

入学したのが昭和22年で、Mさんの学年が第一期の卒業生でした。

入学したのが昭和22年で、Mさんの学年が第一期の卒業生でした。
娘さんが毎年プレゼントしている日記帳。きれいな字でぎっしり書かれています。

その後、結婚するまで、最先端の技術をもつ職業婦人として洋裁の仕事をこなしていました。
「この歳になった今も、針に糸を通しピシッと縫えるのは、親が洋裁学校に行かせてくれたからなの。本当に感謝しているんです」。

「歩けなくても、洋裁も編み物もできて日記も書ける。お友達とおしゃべりも。幸せですね」。/Mさん

「歩けなくても、洋裁も編み物もできて日記も書ける。お友達とおしゃべりも。幸せですね」。/Mさん
3年前まではほとんど動けない状態でしたが、今では杖をついて身の回りのことをこなせるようになりました。編み物や縫い物をしているので、肩はいつも張っています。

楽しく幸せに過ごす

楽しく幸せに過ごす

13年前にご主人が他界。その後、腰を患い、一度は寝たきりの状態になりました。しかしリハビリを続け、在宅マッサージとも出会い、今は杖をついて歩けるようにまで回復しました。歩けなくなってから毎日書いているという日記は、今年で11冊目になります。
「今から11年前のことを人に聞かれても、書いてあるのでちゃんと答えることができるんです」。書いたり、縫ったり、編んだり…と、Mさんの若々しさの秘密は、手を動かすことが大好きで、それを楽しく実践していることにあるようです。
近所でも人気者のMさんのところには、今でもお友達が遊びに来てくれて、手を貸してもらって幸せに過ごしています。
「嫁に来た頃は、地域で一番若い嫁で、先輩たちに可愛がってもらいました。それがいつの間にか一番の先輩になっちゃって。髪も白くなるはずですね」と笑います。
いつでも自然体。人を惹きつけるあたたかな笑顔は、これからも絶えることはありません。