月刊てあて「特集」

今月の特集

2025年8月31日<193号(2025年9月)>

寄り添って支え合う兄弟の絆

  • 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ福島 曽根 宏
  • レポート/てあて在宅マッサージ 相談員 佐藤早苗
寄り添って支え合う兄弟の絆
Mさんは「今日は訪問入浴の日」など、兄に教えてもらったスケジュールも把握しています。また、調子の良い日はスプーンですくって食べたり、歯磨きをしたり、自身でできることをやっています。 兄のEさん、担当マッサージ師の曽根宏と。

 昭和41年(1966年)生まれ58歳のM.Sさんは、小さな体で生まれ、幼い頃から発達に遅れがありました。ですが、養護学校を卒業し、3年ほど前まで福祉支援施設で働きながら家族や仲間に囲まれて豊かな人生を過ごしてきました。寝たきりとなった現在も、兄のEさんが献身的に支え、やさしい日々を共に歩んでいます。

原因不明の病気で

原因不明の病気で
庭には、兄のEさんが作った家庭菜園があり、20種類くらいの野菜が日差しの中で次から次へと実っています。収穫した野菜をご近所におすそ分けするのも楽しみのひとつです。

 早産で生まれ、知的障がいがあり、小中高は養護学校で過ごしたMさん。優しい両親と面倒見の良い兄、姉に恵まれ、家ではテレビを見てゲラゲラと笑ったり、流行りの歌を歌ったりして楽しく過ごしてきました。学校を卒業してからは、福祉支援施設に30年以上通っていたと言います。
「施設では、野菜を包丁で切る野菜加工の作業を担当していました。話すこともできたので、友達もたくさんいました」。
 ところが、約3年前に高熱と全身の震えから救急車で搬送。原因不明の感染症を患いました。コロナ禍で家族でさえ面会ができず、Mさんただ一人で精密検査と転院を繰り返す中でQOLが下がり、寝たきりになってしまいました。

「がんばれ、みっちゃん!」/E.S(兄)

「がんばれ、みっちゃん!」/E.S(兄)
週1回のマッサージを楽しみにしています。拘縮した関節をほぐすため、全身のマッサージを念入りに行っています。「痛いときは『イデデデ』と声を出してね」と言うと、ちゃんと「イデデデ」と反応してくれます。

いつも一緒に笑い合って

 いつも一緒に笑い合って
Eさんが作ったペースト状の白米に鮭フレーク、ヨーグルトなどの朝食を最初は自分で口へ運び、あとからお兄さんに介助してもらいながら完食。おいしそうにいただくMさん。

 半年以上のリハビリを経て、お兄さんの希望によりご自宅での介護が始まりました。
 一から介助について学び、医療や福祉のサービスを利用しながら、献身的に寄り添い合って二人暮らしをしています。
 現在、朝・昼は兄のEさんが食事を用意して介助、夕方は訪問介護を利用しています。そのほか在宅マッサージや訪問入浴、デイサービスなど、多くの支援を受けながら、たくさんの方々とふれあう日々を送っています。
 リハビリを続けているおかげで体調の良い日には、おしゃべりをしたり、身の回りのことも少しずつ自分の力でこなすMさん。
「現状をキープするのが目標です」と、優しいまなざしでEさんは言います。
 Mさんのペースに合わせて焦らずゆっくりと寄り添う姿に、無償の兄弟愛があります。