月刊てあて「特集」

今月の特集

2025年9月30日<194号(2025年10月)>

苦労は人生のいい勉強

  • 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ昭島 太田麻希
  • レポート/てあて在宅マッサージ 相談員 石川典子
苦労は人生のいい勉強
体の痛みや動きづらさが増す中で、家族のためにカレーを作ったり、ちらし寿司を作ったり、「できないながらにするのが好き」とTさん。自分で化粧をし、眉毛を描くこともノルマにしています。「何をしてもらうか」よりも「何ができるか」を常に考えています。本日の施術が終わって、娘のKさんと担当マッサージ師の太田麻希と。

 T.Iさんは昭和12年生まれの88歳。「もう痛いことは、みんなやりました」と言うくらい、関節リウマチ歴43年、子宮筋腫、胆嚢炎、鼠径ヘルニアなど手術・入院歴は10回以上という半生を歩んできました。愛らしい笑顔の裏には不屈の精神が宿っています。

試練を乗り越えて

試練を乗り越えて
字をうまく隠して折ったり、模様だけを切って貼ったり、持ち前の器用さとセンスの良さで作られたポチ袋はお見事。Tさんにとっても楽しみとリハビリを兼ねた大切なひとときとなっています。

 箱にぎっしりと詰められた美しいポチ袋はすべて包装紙をリサイクルしたものです。
「綺麗なのはいくらでも売っているのに、差し上げると皆さんすごく喜んでくれて、作ってほしいとリクエストもくるんです」。
 手のリハビリもかねて作り始めた作品は1000枚以上に。作る喜びと贈る喜びが、ご本人とまわりに笑顔をもたらしています。
 そんなTさんの人生に大きな試練が訪れたのが39歳の時。ご主人が42歳という働き盛りの時期にくも膜下出血で倒れたのです。
「開頭手術を2回して、リハビリには1年以上かかりました。社会復帰できても、毎日職場への送り迎えに加えて、小さい子供たちの世話もあり大変でしたね」。
 家族で苦難を乗り越えた矢先、今度はTさんが全身の関節リウマチを発症。「初期は痛くて泣きたくなるほどでした」。あらゆる新薬を試し痛みを緩和してきましたが、完治することはなく、肺炎や骨粗しょう症などの副作用にも悩まされることになりました。

「何事にも負けない。どんな時にも這い上がる気持ちがあります」/T

「何事にも負けない。どんな時にも這い上がる気持ちがあります」/T
精神的なリフレッシュも兼ねて柔らかく全身をもみほぐすマッサージを行っています。「疲れたり、揉み返しで痛くなったりがないので安心」とTさん。最後の足上げ、腕上げも気持ち良くできて大満足です。

人生に悔いなし

人生に悔いなし

 ご主人は63歳の定年まで奇跡的に勤め上げ、77歳で他界されました。その間の苦労は語りつくせないほどあるはずですが「苦労は人生のいい勉強だったと思えるようになりました」と笑います。
 約半年前に始めた在宅マッサージでは、全身のマッサージとリハビリを行っています。今では嫌いだったリハビリさえ心地よい時間だと話し、持ち前の明るさで前向きに取り組んでいます。
 現在は娘さん家族やひ孫さんに囲まれ、賑やかな暮らしを送るTさん。「とても信じられないくらい幸せです。人生に悔いはないけど、ひ孫ちゃんがかわいいからもう少しがんばって生きようと思います」。
あきらめずに歩んできた人生が、静かな力強さとなって今を支えています。