今月の特集
2025年10月31日<195号(2025年11月)>
経験が人を強くする
- 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ飯能 難波範成
- レポート/てあて在宅マッサージ 相談員 堀田沙季・石川典子
C.Hさんは、今年8月に76歳を迎えました。昨年3月の嵐の日に転倒してしまい入院。その後リハビリ、自宅療養、そして介護付き老人ホームに入居…と、めまぐるしい日々を過ごしてきました。それでも心穏やかに、新しい暮らしと出会いを楽しんでいます。
転んでも、また立ち上がる
幼少期に出会ったピアノの先生に憧れて音大へ進学し、ピアノの先生としての夢を叶えたCさん。その後研究職だったご主人と結婚し、3人の娘さんを育てながら家庭を支えました。
そんなCさんに転機が訪れたのは昨年の雨風の強い日でした。「外に出た途端にズルッとすべって、座るように崩れ落ちたような感覚でした」。
すぐに近所の医院を受診しましたが、骨折とは診断されず。ところが次第にむくみや高熱が出てしまい、大きな病院で検査をして圧迫骨折と判明しました。すぐに入院し治療しましたが、車いすが欠かせない生活になり、退院後は老健に移り、月曜から土曜まで毎日リハビリに励みました。
「先生が細かく理論的に教えてくれて、気持ちがとても前向きになれたんです」。
「人生は経験して初めてわかることがいっぱいある」/C
すべての人に感謝
努力の甲斐あって、杖を使って歩けるまでに回復。その後、自宅での療養生活を送るご夫婦を心配した娘さんたちが施設を探し、今年5月にご夫婦で入居しました。「向かいの部屋だからお互いの負担が少なく、でも近くにいるという安心感がちょうどよいです」と施設の暮らしにも慣れてきました。
新しい場所でもリハビリを続けたいと、週に一度在宅マッサージをスタート。「気持ちも体もフワッとほぐれます」と穏やかな笑顔を見せてくれます。家族をはじめ、施設で出会った友達やスタッフなど、周囲の人々への感謝がCさんの心に満ちています。
「主婦でずっと家事をしていた頃と、世界がまるで違うんです。人それぞれ、みんな良いところをもっていて、一生懸命生きている。そう感じられたことが私にとって貴重な体験です」。
Cさんのてらいのない言葉が深く、そして温かく心に響きます。
