今月の特集
2017年11月29日<99号(2017年11月)>
たくさんの「ありがとう」を心の中に
- 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ 水戸院 鈴木 雅大
- レポート /てあて在宅マッサージ 相談員 井上 純子

マッサージを終えてスッキリした笑顔です。
奥様のAさん、担当マッサージ師の鈴木雅大と。
明るく元気な奥様と、愛猫ビビ、ロロと暮らすT・Fさん(74歳)。平成12年3月31日、車の事故に遭い外傷性脳梗塞後遺症による左片麻痺となりました。定年退職の日のことでした。その後、平成28年には転倒による外傷性くも膜下出血、脳挫傷に……。しかし、持ち前の強い精神力は、医師に不可能と言われた自宅での生活を可能にしました。家族の大きな愛にもいつも支えられています。
定年退職の日に

脳挫傷の影響で一時は会話も減りましたが、少しずつ言葉数も増えてきています。プロ野球のジャイアンツの話しで盛り上がっています。
Fさんのお宅にはたくさんの書棚があります。ビジネス書から歴史関連の本まで、ぎっしりと詰まっており、読書家の家であることを物語っています。
「定年退職に伴い、上司と少し飲みに行き、代行運転で帰宅途中に車が事故に遭ったのです」。
年前のその日のことを今でもFさんは鮮明に記憶しています。対向車がぶつかってきてスピンし、また同車が三度もぶつかるという悲惨な事故。後部座席でウトウトしていたFさんは、助手席と運転席に頸が挟まれた状態から救出されました。定年後は役職も決まっていて、人生はまだまだこれからという時でした。
4カ月間の入院ののち、苦しいリハビリがスタート。「仕事に復帰したい」「娘の暮らすアメリカに行きたい」の一念で、杖を使いながらも歩けるように。
それは、Fさんの強い精神力による奇跡でした。
「今は、妻にはいつも『ありがとう』と言っています」/T・Fさん

「ありがとう」がいっぱい

その後、娘さんが暮らすアメリカに2回の渡航を果たします。
そして昨年の転倒後は、「自宅での生活は無理」と言われましたが、夫婦で力を合わせて車椅子を利用して自宅で暮らすという選択をしました。
体がつらい時、当たり前のことができなくて悔しい時、昨日できなかったことが今日できてうれしい時、奥様は常にそばに寄り添い支えてくれています。
「今は、妻にはいつも『ありがとう』と言っています。昔はそんなこと面と向かっては言えませんでしたから」と、少し照れながら笑います。
「目標は、もう一度元気になって、夫婦でアメリカに行くこと」とFさん。過去は振り返らずに、いつも前向き。太陽のように大きくて暖かい笑顔を絶やさずに、明日に希望を抱いています。