今月の特集
2009年12月20日<05号(2009年12月)>
「障害は不便である。しかし不幸ではない」ヘレン・ケラーの言葉が「がんばれ」と語りかけてかけてくるんです。
- 担当マッサージ師/中央在宅マッサージ 昭島院 徳永陽廣
- レポート /中央在宅マッサージ 相談員 間 明日香
ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、運動神経だけが侵されていく難病です。1996年、49歳のときにS・Kさんはその病気になりました。刻々と容赦なく襲ってくる病の進行と闘いながら、同人誌や介護専門誌の発行、本の出版、福祉団体の結成や講演活動など、すべての難病患者や障害者が安心してくらせる社会のために身を挺して奮闘しています。どんなにつらい現実があっても目をそらさずに、自身のできることを探していく……、その行動力がとどまることはありません。
病気を闘いの相手から、つきあいの相手に
昨日できていたことが今日になるとできなくなっている悲しみと、今日できていたことが、明日にはできなくなっているかもしれない不安……、ALSはその進行性ゆえに、「心をくじけさせるのは充分な病気」とSさんは言います。ご自身も絶望の縁から脱却するまでに3年半の歳月を必要としました。
「ALSを初め、すべての難病患者や障害者が安心してくらせる社会は、患者である私たち自身が、閉じこもることなく声をあげることなしには実現しません。ですから、発症から2年目の1997年にALSの患者会『希望の会』と府中地域の障害者福祉と自立支援を目指す『わの会』を結成して、自分なりに外向き、前向きに取り組みましたさらに、発症3年半のときに、保健所の難病患者の会合で「講演」を依頼され、自分の病気を初めて語ったんです。そうしたら、ALSが闘いの相手ではなく、つきあいの相手になったんです」。
人生は無限の可能性に満ちている
2007年には、介護の理論を学ぶために東海大学大学院健康科学研究科に入学、その2年後には、見事に修士課程を卒業しました。今の目標は、「わの会」運動と「希望の会」を基礎に、①ALS患者の在宅療養支援の研究と活動、②文字盤の普及と研究、③ALS患者の役割理論の研究に取り組みたいと希望を語ります。強い志とそれに邁進する行動力は、どんなに重い障害であっても、その人から奪い去ることはできないのだとSさんを見ていると感じます。
「人生はつらいこと苦しいこともあるけれど、無限の可能性に満ちています」。発症から14年。ALSとつきあう人生を第二の人生と称し、二つの人生から見えてきたものがありました。真摯に生きるS.Kさんの言葉が、ズシンと心にしみました。