今月の特集
2010年4月20日<09号(2010年04月)>
あきらめていた「未来」が見えたとき、再び元気になって釣りに行く夢が生まれました。
- 担当マッサージ師/中央在宅マッサージ 松戸院 院長 安藤 光男
- レポート /中央在宅マッサージ 相談員 剣持智香
千葉県柏市。手賀沼に流れる川沿いの遊歩道を歩いていると、水辺で遊ぶ野鳥のさえずりや、足元に咲く野の花に心がいやされてきます。そんな自然に恵まれた一角にT・Yさん(63歳)は住んでいます。交通事故で頚から下が完全麻痺という状態になってから住み始めた完全バリアフリーの家で、「再び元気になる」希望を胸に、今日も在宅マッサージを待っていてくださいました。
自然に囲まれた家で第二の人生のスタート
平成17年5月28日、その日を境にT・Yさんの人生は一変しました。交通事故によって負った傷害は、頚髄損傷。頚から下が完全に麻痺し、それまでの仕事も趣味も失ったのはもちろんですが、住み慣れた家は階段があるために、退院が決まっても帰ることができませんでした。
「現役時代は、家にほとんどいることがないくらい一生懸命ボランティア活動をしていたんです。だからなのか、たくさんの方の協力が自然に集まって、この家が建ちました」と、奥様。自然に恵まれた環境の中で、車椅子でも楽に移動ができるバリアフリーの家が、第二の人生のスタート地点となったのです。
つらい冬に努力して暖かな春に希望をつないで
「マッサージを受けながら、身体の動かし方、力の入れ方を教えてもらったおかげで、手足が少しずつ動くようになり、あきらめていた〝未来〟が考えられるようになりました」とTさん。気温が低い冬は身体がこわばるため、リハビリはたいへん辛いのですが、真摯に身体を動かす努力を怠りません。
「寒くて、きつい時季にリハビリをしておけば、暖かくなったら散歩をしたり、孫と遊んだり、好きなことができるかなって思っているんです」。
夢は、再び釣りをすること。元気な頃は、海に出てヒラマサ、カレイ、カツオ、ヤリイカなど釣ってきては、ご自分でさばき、奥様と二人で召し上がっていたと言います。「我が家は魚を買う必要がなかったんです!」と釣りの話になると、いつも穏やかな笑顔がさらに輝きます。
けっして今をあきらめず、未来に希望を抱くこと。それに向かって努力をすることで身体が回復し、また回復していることを励みにしてがんばっていく。そんなTさんの第二の人生に後戻りはありません。