月刊てあて「特集」

今月の特集

2010年6月20日<11号(2010年06月)>

ちょっとだけ視点を変えてみるだけで、素敵な生き方ができるんです。

  • 担当マッサージ師/中央在宅マッサージ 所沢院 宮崎 仁
  • レポート    /中央在宅マッサージ 相談員 間 明日香

パーキンソン病は身体にふるえが起きたり、歩行などの動作がゆっくりになる病気です。高齢者に多い病気ですが、T・Aさんは高校3年生のときに発症し、以来約45年以上の日々を病気とともに歩んできました。そんなA.Tさんが、この4月に共著『オン・オフのある暮らし パーキンソン病をしなやかに生きる』(アルタ出版刊)を出版。「体験から学んだ多くのことを、病気に悩む人に少しでも役立ててもらいたい」という思いが詰まっています。

病気とともに45年つらいことも楽しいことも

病気とともに45年つらいことも楽しいことも
「最近は、パソコンの打ち過ぎなど無理をしているのが分かるので、在宅マッサージで身体をほぐしてもらいます。健康状態もチェックしてもらえるので助かりますね」とAさん。担当マッサージ師の宮崎仁と。

訪問のたびに、いつも元気に私たちスタッフを迎えてくれるA・Tさん。その笑顔には、会う人を幸せな気分にさせる不思議な力が宿っているような気がします。10代のころにパーキンソン病(PD)を発症。以後45年の人生は、健康な女性が歩むそれとはまったく違うものでした。 「病気の進行が遅かったというのもあるけれど、よくやってきたなと感じます。幸いにも薬が効いて、楽しいこともたくさんあったから、今、こうしてここにいるのだと思います」。

自分らしく生きよう。こう考えることができたとき、今のこの人生が「かけがえのない私の人生」になる。PDでも素敵な生き方ができる!/A

自分らしく生きよう。こう考えることができたとき、今のこの人生が「かけがえのない私の人生」になる。PDでも素敵な生き方ができる!/A
「マッサージ師さんと気が合うと、自然に身体がリラックス出来ます」とAさん。

人生をあきらめないで自分らしく生きる

人生をあきらめないで自分らしく生きる
初めての著書を手にして。構想から足掛け3年、ようやく思いを形にすることができました。

『オン・オフのある暮らし パーキンソン病をしなやかに生きる』は、薬がよく効いている時間(オン)は何ともないけれども、薬が切れる時間(オフ)になると身動きをするのも大変になるPDとのつきあい方のノウハウを、Aさん初め、この道30年以上の女性3人でまとめたものです。本の中にこんな一節があります。
──病気であっても人生のすべてを諦めることはない。(途中略)家族や友だちとの関係を大切にし、自分らしく生きよう。こう考えることができたとき、今のこの人生が「かけがえのない私の人生」になる。パーキンソン病でも素敵な生き方ができる!──
ちょっと視点を変えて見るだけで、今までつらいと思っていたことが楽になる、素敵な生き方ができる……、医学書にはない温かな眼差しが、本の行間からあふれています。
 Aさんは言います。 「私ね。よく転ぶんです。でもたくさん転んでいるうちに、自然に身体を丸くするとか、小さくなるとか、早く転んでしまうとか、時間をかけて転ぶとかができるようになってきました」。 転ぶことを恐れずに、転びながら、次のより良い転び方を学んでいく──。そうして、人はだれもが人生をしなやかに生きていくものなのかもしれません。Aさんの魅力ある笑顔の秘密が、少しだけ理解できたような気がします。