月刊てあて「特集」

今月の特集

2011年8月1日<24号(2011年7月・8月合併号)>

10歳若ければパラリンピックを目指したのに!

  • 担当マッサージ師/中央在宅マッサージ飯能院 野口 弘樹  難波 範成    
  • レポート/中央在宅マッサージ 相談員 志村 千秋
10歳若ければパラリンピックを目指したのに!
マッサージを終えて、今日もこの素晴らしい笑顔に会えました。
ともに苦労を乗り越えてきた奥様、本日の担当マッサージ師、野口弘樹と。

5階以上の高層ビルを作る建設業一筋。 
30代からは親方として現場を仕切ってきたK.Tさん(71歳)が、3メートルの高さの足場から落下したのは平成19年8月7日のことでした。第12胸椎脱白骨折で後方固定手術をしたものの下肢麻痺に。
事故から2カ月の間は記憶喪失となり、4年経った今も記憶は戻っていません。しかし根っからの負けず嫌いは、その後のリハビリにも功を奏し、趣味として始めた折り紙、塗り絵、歌などで、玄人はだしの腕前を披露してくれます。
傷病名からは想像もつかないTさんの明るさが誌面から伝わるでしょうか。

10歳若ければ、パラリンピックに!

 10歳若ければ、パラリンピックに!
中央在宅マッサージ飯能院には、Tさんの作品コーナーが設けられています。豊かな色彩感覚に癒されます。

「元気がいいのに歩けないから嫌になっちゃうよ!」とインタビューを始めた私達に、Tさんは開口一番そう言って笑います。
 下肢麻痺になったことで、唯一の恩恵はたばこを止められたこと。
「一日6箱吸っていたんですが、1年間の入院生活で、ニコチンが身体からすっかり抜けてしまったんですよ」。
 在宅マッサージを始めてからは、車椅子の操作による上半身の疲れや凝りが楽になったとのことで、「あと10歳若ければ、バレーボールでパラリンピックを目指したのにな〜」と、茶目っ気たっぷりな表情で周囲を和ませることも忘れていません。

「勝負は好きだけれども負けるのは嫌い。ベッドの上でできることだったら誰にも負けないよ!」。T

「勝負は好きだけれども負けるのは嫌い。ベッドの上でできることだったら誰にも負けないよ!」。T
腕2本に頼る車椅子生活は上半身が疲れます。「筋肉が多いから肩が凝っちゃって。この力の入れ加減がいいんですよ」と気持ち良さそうです。

勝負は好きだけれど負けるのは嫌い!

勝負は好きだけれど負けるのは嫌い!
Tさんのまわりには常に明るさが絶えません。

折り紙で作った傘や独楽、デイサービスで描いたという塗り絵、カラオケ、最近始めたハーモニカ……、何をやっても趣味の域を越え、
玄人はだしのところまでいってしまう田代さん。
「勝負は好きだけれども負けるのは嫌い。ベッドの上でできることだったら誰にも負けないよ!」。
そんな負けず嫌いの気性だからこそ、記憶喪失、寝たきりの状態からリハビリを経て今の元気につながっているともいえそうです。唯一勝ち目がないのが、奥様とか。
 「負けるが勝ち!ということもあるからさ」と、またまたいたずらっ子のような目をして、周囲を笑いの渦に巻き込みます。
人生の冬を見事に乗り越えた命のパワーは、今、真夏の光の中で溌剌と輝いています。