月刊てあて「特集」

今月の特集

2011年11月1日<27号(2011年11月)>

悲しかったこと、つらかった過去はすべて忘れてしまいました。

  • 担当マッサージ師/中央在宅マッサージ昭島院 寺田 智洋、室谷 洋子
  • 撮影・レポート/中央在宅マッサージ昭島院 相談員・南三枝子
悲しかったこと、つらかった過去はすべて忘れてしまいました。
「背中が丸かったのですが、最近、姿勢がきれいになってきました。肩はまだ固いです。でもこの通り腕が上がります!」とKさん。担当マッサージ師寺田 智洋と。

K.Oさん、89歳。Kという珍しいお名前は、甲子園球場がオープンした時に生まれたことからきているのだそうです。9人兄弟の長女で、お母さまが他界されてからは母親代わりになって弟や妹の面倒を見てきました。そんな面倒見のいい長女気質で現役時代はバリバリと家政婦(?)の仕事をこなし、貯金をしては海外旅行に出かけた楽しい思い出を話してくださいます。55歳で糖尿病発症、70歳で心臓冠動脈の大手術を行い、昨年は狭心症、心不全で40日間入院。退院後は車椅子の生活となりましたが、「今は毎日が幸せ」と目を輝かせます。Kさんとお会いするたびに生きることの勇気をもらいます。

心も身体も元気で 100歳までがんばれそう

心も身体も元気で 100歳までがんばれそう
「周りには迷惑をかけたくないの。一人で生まれてきたんだから一人で死にます。寺も通夜もすべて手配済み」とKさんらしい哲学がありました。

17年前から「ライトホーム」という高齢者専用住宅で一人暮らしをしているKさん。狭心症と心不全で入院後、腰部脊柱管狭窄症、頚髄症の発症で、いつもは気丈なKさんも「退院直後はあまりにも身体がつらく、どういうふうに死のうかとそればかり考えていたんです」と言います。そんなときに出会ったのが在宅マッサージでした。
「ロボットのように固かった身体が、少しずつ動くようになってきています。今では100歳までがんばれる自信がつきました。神様に生かしていただいたと思っています」。週3回の在宅マッサージと真剣に向き合うKさんを見ていると、「もう一度元気になりたい」という強い意志をひしひしと感じ、それが何よりの相乗効果になっているような気がします。

「毎日健康であることが生き甲斐。『幸せだな、幸せだな』と思って暮らしています。」/O

「毎日健康であることが生き甲斐。『幸せだな、幸せだな』と思って暮らしています。」/O
マッサージを始めて1年半。「この時間が何よりの楽しみ」とKさんは言います。「今では死神がいたら追い払えるほど元気」とか。

生きてきた中で、 今が一番幸せ

生きてきた中で、 今が一番幸せ
Kさんが暮らす高齢者専用住宅の事務所の方と。一日に何回かこうして顔を出してくれます。つかず離れずの距離感が心地よいそうです。

心も身体も元気になったKさんの今の夢は、声楽の勉強をすることと、もう一度、海外旅行に行くことです。
「若いころにすごく厳しい声楽のレッスンを受けていたんです。だからもう一度、個人レッスンを受けて、どこまで歌えるか試してみたいんです。海外は60歳から70歳までの10年間で、ヨーロッパはもちろん、イラクやトルコ、エジプトにも行きました。スペインには3回も。また行かなくちゃって思っています」。
 母親や弟さんを若くして亡くした悲しい思い出、戦前戦後の苦しい時代、つらい過去はすべて忘れてしまったとKさん。
「今が最高! こんな幸せな時期はないですね」。真に心の強い人だけが持つ優しい笑顔がそこにありました。