今月の特集
2012年3月1日<31号(2012年3月)>
人生はいろいろ。でも乗り越えなければね。
- 担当マッサージ師/中央在宅マッサージ座間院 稲葉邦臣
- インタビュー/中央在宅マッサージ座間院 相談員・今成光子
座間市にお住まいのS.Eさん(87歳)は、周りの方からは「Sさん」と呼ばれ、近所の子どもたちからは「Eのばっちゃん!」と親しみを込めて呼ばれています。面倒見が良く、飾らない人柄が評判です。6年前に大腿骨を骨折し入院。長くつらいリハビリを経て、ようやく動けるようになったころに間質性膀胱炎を発症し、その2カ月後には尻もちをついたことで左臀部から下腿も痛めてしまいました。それでも、「これ以上悪くしないようにがんばります!」と心はいつも前向きです。取材で訪ねた日も、春の陽射しのように温かな笑顔で迎えてくださいました。
「ていへん」な人生を 乗り越えて
「たいへん」という言葉を座間のこの辺りでは「ていへん」と言います。Sさんはまさに「ていへん」な人生を生きてきた方です。戦争で青春を奪われ、戦後すぐに結婚。難しいお姑さんの元で食糧難を乗り越え、女子を2人、男の子1人を生み必死に育てました。子どもたちが一人前になって、これから落ち着くというときに、だんなさまが急逝。一週間後に予定していたご長男の結納も中止になってしまいます。さらに3年後には次女の夫が白血病になり、小さな孫2人を残して他界。母子家庭となった次女を支え、Sさんも懸命に働きました。
「人生はいろいろ。でも乗り越えなければね」。愛する者たちを襲った不幸、ご自身のケガや病気……、次々とふりかかる困難に毅然と立ち向かいながらなお、「人への感謝の心を忘れないこと」がSさんの口ぐせです。
人への感謝の心を忘れないこと。そうすれば自然に人との出会いに恵まれます。/S
家族、友人……、 人との出会いに恵まれて
ベッドからまったく動けない時期も、車椅子の時期もありました。間質性膀胱炎の2カ月後に再びケガをしたときは、気持ちがふさがってしまったことも。そんなときにいつも助けて守ってくれたのは、彼女がこれまで愛情深く育ててきた子どもたち、その子どもたちが育て、社会人、大学生、高校生に成長した孫たち、そして身体が不自由になって出会った、病院の先生やデイケアの方、友人たちでした。
「私は人との出会いには恵まれました。一番恵まれたのは在宅マッサージかな。週1回、優しい先生が来るのを楽しみに待っています!」とも。少女のような人なつっこさと、聖母のような優しさ……、Sさんの限りない魅力の源泉は、そんなところにあるのかもしれません。