今月の特集
2012年5月1日<33号(2012年5月)>
いつも心に歌があります。
- 担当マッサージ師/中央在宅マッサージ 水戸院 菊川満 宮本隆宏
- レポート/中央在宅マッサージ 相談員 高橋光代
趣味は音楽。ジャンルを問わず聴くことも歌うことも大好きだっA.Tさん(64歳)。平成14年に「くも膜下出血」で入院し、4回の手術を経て退院はしましたが、右半身麻痺と失語症というつらい後遺症が残りました。それから10年。今でも、あきらめることなく病気と懸命に向き合っています。いつも明るく朗らかなTさんの内側には常に不撓不屈の精神があります。
歌を口ずさみながら在宅マッサージ
クラシック、ジャズ、ポップス、演歌まで、Tさんのお気に入りのCDを見せていただくと、その幅の広さに驚きます。
病気を発症する前は、青森県出身の伊奈かっぺいのファンになり、高速を車で飛ばして青森までライブを聴きに行ったり、奥様とその歌の歌詞をたどるユニークな旅をしたと言います。
取材の日、BGMとしてかかっていたのは、中村雅俊さんのなつかしいヒット曲。Tさんは、いつも大好きな歌を聴きながら、時には口ずさみながら、マッサージを受けます。心身ともにリラックスして、身体の緊張も自然にほぐれるようです。
現状維持ができているって、後遺症を持つ者にとってはすごいことだと思うんです。/T
奥様と二人三脚でリハビリ
退院してから最初の5年間は、動かなかった身体を、奥様が毎日リハビリマッサージを行っていました。
「リハビリと在宅マッサージのおかげで、現状維持ができています。現状維持というと成果がないのかな、と思われるかもしれませんが、後遺症を持つ者にとってはすごいことなんです」と奥様。
病気になる前は、責任ある仕事をこなしていました。つらいことに耐え、成果を上げるまでがんばり続けるビジネスマン魂が、今でもTさんの中には強く息づいているのかもしれません。
Tさんに、今一番好きな食べ物は?とうかがと「お、さ、し、み」というゆっくりとした返事とともに、晩酌のジェスチャーをして大爆笑をさそい、場を和ませてくれました。誌面で笑い声を届けられないのが残念です。
今日もきっと奥様が、一日がんばったご褒美に、おさしみを用意してくれることでしょう。