月刊てあて「特集」

今月の特集

2012年9月1日<37号(2012年9月)>

きっと、楽しい未来が待っている。

  • 担当マッサージ師/中央在宅マッサージ座間院 樋口彰大
  • レポート/中央在宅マッサージ相談員 今成光子

N.Aさん(73歳)は、8年前のある朝、起きたら突然立てなくなっていました。病気は原因不明の急性脊髄炎。そして後遺症として両足に麻痺と感覚異常が残りました。しかし、今では、車椅子に乗って近くのスーパーマッーケットに買い物に行けるまでになったというAさん。8年間リハビリを続けてきた彼女の軌跡から、真摯に努力を続けること、あきらめないことの大切さを学ぶことができます。

笑顔を奪った出来事

笑顔を奪った出来事
取材のこの日のお天気は曇り。でも身体の調子はとってもいいとN.Aさん。マッサージを終えて身体もすっきり軽くなりました。担当マッサージ師の樋口と。

 いつも朗らかな笑顔で私たちを迎えてくれるAさん。元気なころはご主人とともにインテリアショップを経営していました。
接客はもちろん重い絨毯や床材を運んだりの重労働も苦にすることなく、また、3人の男の子のお母さんとしてもがんばってきました。
「今にしてみれば、ついつい一生懸命になって、働き過ぎてしまったのだと思うんです」。
 足がまったく動かない、感覚もない状態から、Aさんの第二の人生はスタートしました。
「どんなリハビリをするのか検討もつかなかったのですが、まず、目の前の車椅子にどう座るか、転びそうになったらどうするか、実際に倒れたらどうするかなどを少しずつ教えてもらいました。両手は後遺症が残らなかったのが幸いでした」。

自分らしい感覚が戻ってきたなぁー、と感じる瞬間がうれしい。/A

自分らしい感覚が戻ってきたなぁー、と感じる瞬間がうれしい。/A
手前にあるのが愛用の電動車椅子。これに乗って、近所のスーパーマッケーシにお買い物に行きます。

未来を信じているから

未来を信じているから
少しずつ皮膚感覚が戻ってきているというAさん。「細かいところは手で触ってもらうのがいいような気がします」。週2回の在宅マッサージを楽しみにしていらっしゃいます。

しかし、Aさんの笑顔を奪う不幸は続きました。車椅子をやさしく押してくれていたご主人が、3年前に膵臓がんで他界してしまいます。
「自分の病気のことで精一杯になっていたら、夫のほうが先に逝ってしまって。つらかったですね」。
 この3年間は、悲しみを胸の奥にそっとしまいこんで、懸命に介護をしてくれたご主人のためにも元気になろうと努力をしてきました。
最近は、足を少し上げられるようになり、下に落ちたものが取れるようになるなど、努力の効果が目に見える形で表れるようになってきました。それでも、天気が下り坂の日などは身体が重くなって動かなくなり、少しだけ後戻りすることもあると言います。
 1カ月前から歩行器を使って、歩く練習を始めました。
「今の目標は、しっかり歩けるようになることです!」。
 未来を信じている人の、やさしい笑顔が輝いていました。