今月の特集
2014年5月15日<57号(2014年5月)>
新しい人生だと頭を切り替えて
- 担当マッサージ師/中央在宅マッサージ 所沢院 佐野 貴志
- レポート /中央在宅マッサージ 相談員 間 明日香

K・Wさん(70歳)は、脳梗塞による右半身麻痺と失語症とともに生きて5年目になります。不自由な身体に加え、言葉を失うという苦しみは、患っているご本人しか本当には理解できないものなのかもしれません。失語症全国大会「東京多摩大会」の実行委員長として、今を強く生きるWさん。そこには鋼のような精神力とあふれる勇気があります。
今までとは違う人生

躍動感と独創性に満ちた版画、自然の中の風景をそのままに、美しい色彩で描いた絵画…。かつては右利きだった渡邊さんが左手で制作した作品には、息をのむような迫力があります。
「突然、言葉ができなくなって、字も書けなくなりました」。

「身体も動かないから外にも出られない。絵しかなかったんです。最初は左手でペンを持つのもたいへんでしたよ」と話す朗らかな表情には、大きな喪失感と葛藤を乗り越えてきた強い心が宿っています。
「今までの人生とまた違う人生だと、頭を切り替えました。昔の自分と比べていたら、新しい自分がダメになるから」。
嘘のつけない仲間たちと、良い人生を生きているなって/Wさん

嘘のつけない仲間と

Wさんは、身体機能回復させるリハビリと、言葉を取り戻す言語療法にも懸命に励んでいます。また、「若竹会」という失語症の友の会にも参加。15人ぐらいのメンバーで、料理をしたり、旅行や花見をしたり、寸劇を練習したりしています。
「若竹会」のような友の会が全国にあり、年一回、全国大会を開催します。29回目にあたる今年は、東京多摩地区での開催になり、その実行委員長をWさんが担っています。
交流を深め情報交換をしながら、失語症患者に必要なことは何かなどを話し合います。
「病気をしてからのほうが、友達が増えて社会が広がりました。しかも、みんな言葉を出すだけで精一杯だから、嘘をつくなんて難しいことはできない。嘘のつけない仲間たちと、良い人生を生きているなって。そう思うと楽しくなります」とWさん。
心を開き視野を広げ、可能性に満ちた未来を見つめています。
リハビリにも懸命に励んでいます
