月刊てあて「特集」

今月の特集

2014年12月25日<64号(2014年12月)>

幸せを一歩一歩 踏みしめながら

  • 担当マッサージ師/中央在宅マッサージ 飯能院 高橋 伸子
  • レポート    /中央在宅マッサージ 相談員 志村 千秋
幸せを一歩一歩 踏みしめながら
「次の目標は一人で留守番できること、誰かが来たら玄関まで出ていけるようになること、電話が鳴ったらとりにいけるようになること」とHさん。
常に気持ちは前へ前へと向かっています。

25年前から週3回4時間の人工透析を受けているS・Hさん(77歳)。昨年11月に脳内出血を起こしてからは右半身に麻痺が残りました。退院直後は毎日寝たきり、車椅子の生活でしたが、今は家の中は杖を頼って一人で移動するなど目覚ましい回復力を見せています。Hさんの前向きな姿勢や頑張りは、周囲の人々の励みにもなっています。

夜中の歩行訓練

夜中の歩行訓練

「退院直後は何もできなくて、毎日ここで寝ていただけでした。これからどうしたらいいのだろうって、本当に不安でした」。
入院中、そして退院後と、ご主人や娘さんをはじめとするご家族が、そんなHさんをずっと支え続けてきました。

「退院直後は何もできなくて、毎日ここで寝ていただけでした」。

「退院直後は何もできなくて、毎日ここで寝ていただけでした」。
10年間続けていた絵手紙。お姉様に「面白いからやってみなさい」とすすめられたのがきっかけでした。入院してからは描いていませんが、また始めてみようかと…

「これからどうしたらいいのだろうって、本当に不安でした」。
入院中、そして退院後と、ご主人や娘さんをはじめとするご家族が、そんなHさんをずっと支え続けてきました。

最初は台所の冷蔵庫に氷1個を取りに行くことから始まり、

最初は台所の冷蔵庫に氷1個を取りに行くことから始まり、
「入院中に病院で受けていたマッサージと全く変わらず、素晴らしく気持ちがいいんです」とHさん。退院したのが2月、その翌月には在宅マッサージをスタートしました。

それができると歯を磨きに行ってみよう、トイレにも行ってみようと、杖を使って歩く練習をしました。しかも、ご主人に心配をかけないように夜中にこっそりと。
一時、29kgまで落ちた細い体に、そうして少しずつ歩くための筋力をつけていったのです。

「甘えていてはダメ。一人で できるようにならなきゃって」/Hさん

「甘えていてはダメ。一人で できるようにならなきゃって」/Hさん
手作りのあたたかい作品が部屋のあちらこちらに飾られていて、見る人の心を和ませます。

一歩一歩、力強く

一歩一歩、力強く
腕の筋肉をつけるリハビリ道具。入院中に病院で使ってたものを真似してつくったご主人の手作り。

脳内出血で倒れる以前は、陶芸、籐編み、革細工、木工とたくさんの趣味をお持ちで、入院するまでは、絵手紙を描いて楽しんでいました。
雨の中に咲く紫陽花、春の陽気な風に揺れるスミレ等、足下に咲く小さな草花を愛し、季節の移り変わりを大切にする畑さんの豊かな感性が、ハガキ大の白い紙に、あふれるように詰まっています。

「今は毎日がうれしくて。本当に私は幸せだと思います」。

「今は毎日がうれしくて。本当に私は幸せだと思います」。
上の写真は踏み台です。

「主人と娘の協力なしではここまでくることはできませんでした。ただただ感謝です」。
昨日、ご主人と一緒に押し車を買ってきたというHさん。一歩一歩、力強く大地を踏みしめながら、季節の風を感じて歩く日は、もうすぐそこまで来ています。