月刊てあて「特集」

今月の特集

2015年3月30日<68号(2015年4月)>

100年目の春を目標に。

  • 担当マッサージ師/中央在宅マッサージ 浦和院 安達 陽季
  • レポート    /中央在宅マッサージ     荻原 あゆみ
100年目の春を目標に。
常に優しく寄り添う長女のIさん(右側)。月に1回、宇都宮から三女のAさんが泊まりがけでやってきます。
また沖縄に住む次女のNさんも3カ月に1回は来て、姉妹みんなで介護生活を助け合っています。
そんな娘さんたちの深い愛情が、Tさんの精神的な支えにもなっています。
( 担当マッサージ師の安達陽季を囲んで—。)

S・Tさん91歳は、「紫さん」と愛称で呼ばれるくらい紫色が大好きです。ベッドカバーは優しいすみれ色、洋服も紫色のコーディネートでおしゃれに決めて、いつも私たちを迎えてくれます。20年以上にわたる「メニエール病」と「変形膝関節症」による痛みと闘いながら、100歳までがんばりたいとTさん。病気に屈しない美しい笑顔が家族の支えでもあります。

紫色の秘密

紫色の秘密
家の壁のあちらこちらに額に入れられた刺しゅうの作品は、季節の花の自然のままの表情を優しい糸で表現したものです。Tさんの人柄があふれています。

整えられた髪に白い肌、深い紫色のニットが上品な印象です。30歳のころから紫色が大好きだったというTさん。若い頃は、おしゃれを謳歌し、民謡や長唄、三味線、また園芸など、趣味も多彩だったと言います。
部屋に飾られた思い出の写真の中には、ここ一番のときには、必ずお気に入りの紫色のワンピースや着物姿で決めたTさんの凛とした姿があります。
つらいときも楽しいときも、常にともにしてきた紫色という色、そして90歳を過ぎた今もTさんの若々しさと元気の秘密が、その色の中にはあるのです。

今年で92歳。100歳になったら、また取材に来てくださいね」。/Tさん

今年で92歳。100歳になったら、また取材に来てくださいね」。/Tさん
旅行の日程もマッサージの予定が何よりも優先。膝や腰の痛みを軽くして、何とか歩けるようになるのが目標です。

愛する家族に囲まれて

愛する家族に囲まれて

昭和42年に栃木県大田原から出てきて、長女のIさんが住まう埼玉県浦和で暮らし始めました。
その後、メニエール病の進行による目眩から歩行が困難に。さらに、変形膝関節症による膝や腰の痛みにも悩まされるようになり、ご家族の介護が必要になりました。
得意だった料理も三味線も以前のようにできなくなりましたが、今の楽しみは、長女のIさんに教えてもらう刺しゅうと、7人の孫、7人のひ孫たちの成長です。

先日も、ひ孫の絵が入選して、展覧会が上野で開催されたので、娘に車椅子を押してもらって観に行ってきたんですよ。

先日も、ひ孫の絵が入選して、展覧会が上野で開催されたので、娘に車椅子を押してもらって観に行ってきたんですよ。
Tさんの血をしっかり受け継ぐお孫さんや、ひ孫さんたち。「ババちゃん」と慕われています。

「絵の才能があるみたいなの」。
 孫、ひ孫の話になると、お顔がほころび続けます。いつもそばにいて支えてくれる娘さんたちにも感謝の毎日です。
「今年で92歳。100歳になったら、また取材に来てくださいね」とTさん。
 春のお日様のように明るく暖かい笑顔がありました。