月刊てあて「特集」

今月の特集

2015年5月30日<70号(2015年6月)>

人生90年、夢幻がこととなれ。

  • 担当マッサージ師/中央在宅マッサージ 福島院 関 美穂
  • レポート    /中央在宅マッサージ     砥石 ちぐさ・五十嵐 緑
人生90年、夢幻がこととなれ。
取材中、たくさんの素敵なお話やお言葉をいただきました。
「『てあて』という言葉も大好きです。いろいろな人からの『てあて』を受けて、私たち は生きているのだと思います」。
本日の担当マッサージ師、関 美穂と。

1923年生まれ。今度の誕生日で92歳になるM・Hさん。現役時代は、小学校の社会と国語の先生から校長に、そして教育長にと、子どもたちの教育に生涯を捧げてきました。
施術でうかがうたびに、昔のお話やさまざまなことを教えてくださり、一つひとつの言葉は、深みがあり人生の勉強になります。現在はパーキンソン病を患い、毎日、痛みや体の違和感と闘い続けています。

誠実に生きる

誠実に生きる

在宅マッサージをはじめ、お一人でも手すりを使った運動を地道に続けられ、病気に対して常に前向きなHさん。
「教師は、純真な子どものために先に立って行動しなければいけないから、『前向き』は身についているんですよ」と言います。
小学校の先生、そして校長を経て、福島県伊達郡保原町(現・伊達市)の教育長を二期勤めあげました。その功績に対して勲章も授与されています。
そんな経歴をうかがうと、信念をもって一つのことに精進してきた人生を垣間見ることができます。

「好きな言葉の一つに『誠実』があります。

「好きな言葉の一つに『誠実』があります。
『何事にも誠実を傾けよ。それが、趣味となるまでに。』
Hさんが書いた「わが人生訓」。力強い筆致です。誠実に生きてきた強い精神力が伝わってきます。

それは、人に迷惑をかけない、自分で言ったことは実行する、不得手なことでも、趣味になるまでがんばるということなんです」。
齢91年を重ねてもなお、努力をすることの大切さを、体現してくださるHさんの姿勢に、私たちは多くのことを学ぶことができるのです。

「不得手なことでも、趣味になるまで努力し続けることが『誠実』ということです」。/Hさん

「不得手なことでも、趣味になるまで努力し続けることが『誠実』ということです」。/Hさん
「体から脈とか筋肉とかを汲み取っていただくの。その反応がとてもいいんです。気に入っています」とHさん。

無理をしないこと

無理をしないこと
風景や生物、そして動物など、深い洞察力と穏やかな筆づかい、美しい色彩が心を和ませます。作品の一つひとつに、Hさんの想いがあふれています。

50年以上描いていなかった絵を、仕事を辞めてから思い出し、描き始めました。
当初は油絵でしたが、準備や後片付けがたいへんなため、今は、水彩やクレヨンで描いています。温かみがあるタッチと美しい色彩が見る人の心をとらえます。
「三文画家ですよ。どの絵も、私が筆を折らない限りは、いくらでも直すところがあり、永遠に未完成です」と笑います。

長生きの秘訣は「臆病になること」とHさん。

長生きの秘訣は「臆病になること」とHさん。
取材は、ご自身のメモ帳を開きながら、しっかりご対応してくださいました。スーツ姿も決まっています。

臆病なことが原因で、無理はしてこなかった、おなかいっぱいに食べてこなかった、ケガをするような動きはしてこなかったと言います。
「すべては 年の歴史の一コマ一コマなんですよ。『90年、夢幻がこととなれ』です」。
子どもたちの先生から、人生の先生に。その力強い生き方のすべてが手本です。