今月の特集
2015年8月30日<2015年9月 73号>
あたりまえの一日一日が宝物。
- 担当マッサージ師/中央在宅マッサージ 座間院 宮川 武志
- レポート /中央在宅マッサージ 相談員 小澤 由紀子
豊かな白髪とふっくらとしたお顔からこぼれる笑顔が上品なK・Iさん(93歳)は、東京生まれの東京育ち。結婚・出産と激動の戦前・戦後を逞しく生き抜き、昭和45年に家族で神奈川に移り住みました。現在は娘のYさんと暮らし、いくつかの大きな病を経て、痛みや苦悩を伴う毎日ですが、あるがままの今を受け止め力強く生きています。
自宅がいちばん好き
平成19年に脳梗塞、2年後に大腿骨骨折、さらにその2年後には心不全を起こし、病院に救急搬送されて命をとりとめたというKさん。退院し日常生活に戻ったものの、移動は家の中も車椅子となりました。
からだ全体にわたる痛み、指や足のしびれ、浮腫など、あげれば切りがないほどの辛い症状が続く毎日の中で
心の支えは、ともに暮らす娘のYさんです。ヘルパーは頼まず、デイサービスも1度も利用したことがありません。
「ほかの人といると、かえってストレスがたまってしまうの。家にいるのがいちばん好きです」。
介護を担うYさんに、なるべく負担がかからないように、できることは一人で行うようにがんばっています。
「マッサージの先生が、母の恋人みたいで、いつも楽しみにしているんです」。
おいしく食べること
Kさんが心がけていることのひとつが、一日三度、きちんと食べることです。
夏は長野県の野辺山でペンションを営む二女が送ってくる、産地のレタスも毎日いただきます。
「味がこの辺のものとぜんぜん違うんです。外葉は炒め煮にして、中のやわらかいところはサラダにします」と、細い体に少しでも栄養をつけてほしいと、毎日工夫して料理しています。
また、Kさんは昔、油絵を描いていました。
「油絵を描いている時がとても楽しかったの」と、当時のことを話します。かつてKさんの弟さんが画廊を営んでいた程、絵に精通していました。
「今はマッサージの先生が、母の恋人みたいで、いつも楽しみにしているんですよ」。
起きて、食べて、笑って、眠る…、Kさんにとって、娘とともに過ごす一日一日が宝物。足元の幸せがそこにはあります。