月刊てあて「特集」

今月の特集

2015年10月30日<75号(2015年11月)>

自分の力で、まだまだ先へ

  • 担当マッサージ師/中央在宅マッサージ 水戸院 藤田 正樹
  • レポート    /中央在宅マッサージ 相談員 田谷 憲史
自分の力で、まだまだ先へ
「前は、ベッドから車椅子に移ることも一人では出来なかったんですが、今は出来るようになったんですよ」と、Tさん。医療マッサージと毎日の努力が、 少しずつ結果となって現れてきています。担当マッサージ師、藤田正樹と。

大きなピンク色の眼鏡がおしゃれな、T・Kさん(81歳)。変形性腰椎症、両変形性膝関節症を二〇年以上患い、一年前から歩くことが出来なくなりました。車椅子での生活になったものの、今の目標は「まずは一人で、のんびりお風呂に入ること」とTさん。希望を抱きつづける毎日は、笑顔が耐えることがありません。

足腰への負担が重なって

足腰への負担が重なって
「近所の八百屋さんが、野菜の販売に来てくれるんです」。
今日もYさんと一緒に、じっくり吟味してえらびました。

Tさんが倒れたのは、二〇年以上も前のことです。ホテルの掃除などを請け負う会社で、仕事中に意識を失い、救急車で病院に運ばれました。
「血圧が二〇〇以上になって倒れたのですが、それまでは感じていなかった足腰への負担が一気に出ました」。
その後、徐々に歩行が困難になり、杖が必要になり、さらに症状が進み、一年前には三カ月間寝たきりに。今は少し回復し、車椅子での生活になりました。

「歩けないのって本当に不便。

「歩けないのって本当に不便。
マッサージ+立位訓練

マッサージのあとに立つ練習をしていたのですが、一週間前に車椅子で一人で移動していたら転んでしまって、また逆戻りしてしまったんです」。そんなアクシデントにも負けずに、マッサージ師の指導のもと、ベッドに寝たまま足を上げたり、座ったまま足踏みしたり、自分でできるリハビリに今も励んでいます。

「目標は、一人でお風呂に入る、トイレに行く、台所に立つことです」。/Kさん

「目標は、一人でお風呂に入る、トイレに行く、台所に立つことです」。/Kさん
しっかり筋肉をほぐしてもらうことで、足の力を取り戻します。 「マッサージのあとは、昨日まで挙がらなかった足が、挙がるようになっていたりします」。

好きな事をもっと自由に

好きな事をもっと自由に

仕事をしていた頃のTさんは、活発で陽気。今でも一緒にいるとその場を盛り上げようとするムードメーカーです。手先も器用で、料理や掃除、庭木の剪定、縫い物、編み物も得意でした。
「庭にまた花をいっぱい植えたいの。盆踊り用のゆかたもよく頼まれて縫っていたのよ。好きなことなら、夜中の二時までやっていても平気だった頃がなつかしいわ」と微笑みます。

今は、ご主人のYさんをはじめ、毎日ヘルパーさんが家事を手伝ってくれていますが、

今は、ご主人のYさんをはじめ、毎日ヘルパーさんが家事を手伝ってくれていますが、
「人形が大好き」というTさんは、以前は自分で作って楽しんでいました。今は、親戚の子どもたちが来るたびにかわいい人形を持ってきてくれます。

それに感謝しながらも、『一人でお風呂に入る、トイレに行く、台所に立つこと』を目標に定め、自立を目指しています。
「以前よりも、自分で起きて、だいぶ動けるようになりました。だからもう少しだなぁ〜って」。
そんなTさんの『昨日よりも明日は、もっと良くなる』という信念が、内側から溢れる力となっています。