月刊てあて「特集」

今月の特集

2016年1月30日<78号(2016年 2月)>

家族を愛し、踊りを愛し心豊かな人生です

  • 担当マッサージ師/中央在宅マッサージ 飯能院 菊池 哲郎
  • レポート    /中央在宅マッサージ 相談員 宮嶋 正子
家族を愛し、踊りを愛し心豊かな人生です
主人が畑を耕し、家族が食べる分の野菜を作り、それを料理するのがTさんの担当でした。
お正月はおしるこ・七草粥、お彼岸にはぼた餅・おはぎ、春にはヨモギで草餅と、季節の節目や行事には必ず料理を作っていました。
<隣は娘さんのKさん、後方は担当マッサージ師 菊池徹郎>

T・Sさんは大正12年生まれの92歳。特別養護老人ホーム「さかどロイヤルの園」で暮らしています。
変形性腰椎症、変形性頸椎症を患い体の不自由が続いていますが、2年前から在宅マッサージを始めました。
かつては体を動かすのが大好きで30年以上続けた民謡踊りでは、全国各地で踊りの指導もしていました。

歩いて歩いて

歩いて歩いて
マッサージの日が楽しみというTさん。この日は「脇が痛い」ということで、脇を中心に施術を行いました。「いい気持ちです」とTさん。

Tさんは、埼玉県の日高市に6人兄弟の2番目として生まれました。お料理上手のお母様の影響でお料理がとっても上手な娘さんになり、当時のジョンソン基地、現在の入間基地にお勤めのご主人と知り合って結婚。狭山市に暮らすようになりました。
結婚後は、2人のお子さんに恵まれ、当時としてはめずらしい保険会社の外交員の仕事をしていました。
「車なんてないからね。歩くのが仕事で、田舎の遠くのおばあちゃん達につかまると、いつまでも話が続いてね」のエピソードからTさんの人柄がうかがえます。きっと誰からも慕われ、来てくれるのを心待ちにされていたことでしょう。そんな頃に出会ったのが民謡踊りです。
「何となく仲間に入ってしまった踊りですが、体を動かすのが好きだったので楽しくて。そのうちに講師の資格を取得し、日本各地の大会で踊ったり、講習会の指導員もやるようになりました。30年以上やっていましたね」。
特に地元の入間川七夕まつりでは流し踊りを、また上尾の埼玉県大会や全国大会には毎年欠かさずに参加していたといいます。

「踊りは何歳でおしまい、という終わりはないの」。/Tさん

「踊りは何歳でおしまい、という終わりはないの」。/Tさん
野菜中心の生活だったためか大正生まれと思えないほどのきれいな肌です。
「立てなくても、こんな風に手で踊ることができるの」とTさん。指先までピタリとポーズが決まっているのがさすがです。

家族にとって

家族にとって
おそろいの浴衣をシャキッとまとって踊っていたころ。踊りの師匠をはじめ、たくさんの仲間にも恵まれました。

仕事と家事に育児、そして踊りと、それらをすべてこなしてきたTさんがどれほどバイタリティのある女性なのか想像できます。
そんなTさんですから、体が動かなくなった時は本当に辛かったはず。それでも「踊りには、何歳でおしまい、という終わりはないの。車椅子に座っていたって、手さえ動けば踊ることができます」と気持ちはいつでも前向きです。
おごることのない自然体のTさん。家族にとって、今も昔も大きな存在であることに間違いはありません。