月刊てあて「特集」

今月の特集

2016年2月24日<79号(2016年3月)>

不可能を可能にする力

  • 担当マッサージ師/中央在宅マッサージ 松戸院 中原 竜二
  • レポート    /中央在宅マッサージ 相談員 玉城 さや香
不可能を可能にする力
ぼーっとしているのが嫌いで、毎日日記をつけたり、雑誌の切り抜きをしたり、机に向かっています。
昨日できなかったことも、明日にはできるようになることを信じて生きています。
自閉症のこだわりを持ちながら、お母さまといっしょに困難をのりこえてきました。
(後方はお母さまのTさん、隣は担当マッサージ師 中原竜二)

元気がよくいつもニコニコ、Y・Gさん(45歳)。 平成24年、41歳のときに、脳出血を起こし左半身麻痺となりました。そのときに周囲から言われた「不可能」や「無理」という言葉に、立ち向かっていこうと決心したのはお母さまのTさんです。懸命なリハビリと、在宅マッサージを始めて2年、深い愛と強い精神力に支えられて今、Yさんは笑顔で力強く生きています。

ひとつずつの「できた」を励みに

ひとつずつの「できた」を励みに
いまでは麻痺側の足も使って、何とかかるけるようになるまで回復してきています。

いつも在宅マッサージを楽しみに待っていてくださるYさん。リハビリ病院に入院したときは、自立して歩くことは無理と宣告されました。そのときに、「いいえ!私が歩かせてみせます」と、お母さまのTさんは決心したのです。

立位訓練、立位交互荷重、装具を付けての歩行訓練、段差を降りる練習など、日常、家でできることは毎日欠かさずに続けてきました。

立位訓練、立位交互荷重、装具を付けての歩行訓練、段差を降りる練習など、日常、家でできることは毎日欠かさずに続けてきました。
週3回、お二人の希望に応え、麻痺側を中心にさまざまなリハビリにつながるマッサージをしています。

いちばんつらい思いをしているご本人のYさんをやる気にさせるのもお母さまの役目。
「当初はYやろうね!と言うと、『嫌です』『やりません』と返ってきました。だから在宅マッサージの先生に協力してもらって『はい、やりましょう』って。そうするとやるんです。できたら二人で拍手して『できた、できた〜』って。それの繰り返しでした」。
その地道な努力の結果、杖をつけば麻痺側の足も使って、何とか歩けるようになるまで回復してきています。

ぼーっとしているのは嫌い

ぼーっとしているのは嫌い

Yさんは週3日、福祉作業所でシール貼り等の仕事をしています。また週3回のデイサービス、さらに在宅マッサージと忙しい毎日です。でも弱音をはいたり、休んだりすることはありません。福祉作業所からは、わずかですがお給料もいただいています。

「この前、病院の帰りに『お母さんお昼は私がごちそうします』と言って、お金をだしてくれました。泣いてしまいそうでした」。

「この前、病院の帰りに『お母さんお昼は私がごちそうします』と言って、お金をだしてくれました。泣いてしまいそうでした」。
「たいへんな状況の時でも陶芸という趣味の世界があったからのりこえられました」とTさん。
「できるようになったよ、お母さん。教えてくれてありがとう!」

いつも前向きながんばり屋、強い精神力、人を思いやる優しい心は、母から娘へと受け継がれました。
「状況のせいにはしません。立ち上がって、望む状況を探しにいけばいい。それが生きるということだから」とTさん。
Yさんが、何よりも母から譲り受けたこと。それは、諦めない力強い生き方なのです。