月刊てあて「特集」

今月の特集

2016年6月20日<82号(2016年6月)>

人との出会いが生きる力に

  • 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ 松戸院 川田 勇次
  • レポート    /てあて在宅マッサージ     玉城 さや香
人との出会いが生きる力に
店を出そうと言ってくれたのも、ケーキ作りのサポートはもちろん、アイディアを
出してくれるのはパートナーのKさんです。担当マッサージ師、川田勇次と。

Y・Nさん(52歳)が、筋ジストロフィーと診断されたのはパティシエの修行をしている19歳のときでした。病の進行と闘いながら仕事を続けていましたが、42歳で車椅子の生活となり一時は夢を断念しました。そんなNさんが、昨年の12月、洋菓子店をオープンさせるまでには、パートナーのKさんをはじめとするたくさんの人の支えがありました。

三つ葉を 幸せの四つ葉に

三つ葉を 幸せの四つ葉に

店の名前は『パティスリー みつ葉とはーと』。店名の由来は、ご主人のNさんとパートナーのKさん、小学4年生の娘さんを合わせて「三つ葉」。そこに娘さんの名前「葉冬(はーと)」を添えた意味なんです。
都内の老舗結婚式場、東京會舘でパティシエとして働いていたNさんは、車椅子生活になって仕事を退職したあと、家にひきこもっていた時期もありました。新たな人生を歩み出すきっかけとなったのが電動車椅子でした。
「電動の車椅子に乗ることで、歩行困難な状態で歩いていたときよりも、ぐんと行動範囲が広がったのです」。
いろいろな障害を持つ人に出会い、みんな一生懸命生きている姿を見て、Nさんもまた、自分の力でしっかり生きていこうと決意しました。そして、積極的にボランティア活動を行うようになり、その中で介護福祉士をしていたKさんと出会い、一度はあきらめていた夢の洋菓子店オープンを後押ししてくれたのです。

「いろいろな人との出会い、応援があったから、開店することができました」/Nさん

「いろいろな人との出会い、応援があったから、開店することができました」/Nさん
おしゃれな店内は、友人の作家さんが季節毎にコーディネートしてくれます。手作り雑貨も取り揃え、焼き菓子とのコラボはプレゼントにお買い求め頂けます。

電動車椅子のパティシエ

電動車椅子のパティシエ
緊張した体をマッサージでほぐします。「手が痛かったり、腰が痛かったり…。痛いところを集中的にやってもらうとよくなり疲れもとれるので助かっています」。

二人三脚で営む店は、『電動車椅子のパティシエ』として、全国紙の記事になったこともあり、評判を呼んでいます。
Nさんの活動に関心をもった高校生や専門学校生がケーキ屋を手伝ったり、障害を持つ人やその家族が遠方からケーキを買いに訪れ、「来てよかった。勇気をもらった」と言ってくれました。
開店から5カ月、Nさんは、健常者と障害者がともに生きるノーマライゼーションを発信するケーキ屋として考えています。
「私自身が人との出会いに力をもらってきました。健常者と障害者が一人の人間として出会い、分けへだてなく、自然に交流できる場所にしたいのです」。
また日々病とも闘うNさんは、むくみや拘縮を緩和させるため、マッサージは欠かすことができません。夢は、大好きなケーキ作りを続けながら、心のバリアフリーを広げていくこと—。
今までの活動を更に広げ発信するその第一歩を、お店のオープンと共に踏み出しました。