今月の特集
2016年11月24日<87号(2016年11月)>
笑顔の中にある、やさしさと強さ
- 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ 飯能院 福井 岳史
- レポート /てあて在宅マッサージ 相談員 志村 千秋

T・Nさん(86歳)は、5年前に、腰部脊柱管狭窄症を患い、手術後も坐骨神経痛や下肢の痺れなど、ずっと寝たきりの日々が続いていました。また平成19年と21年には、心筋梗塞で2回救急搬送されたこともあります。そんなTさんが、在宅マッサージを始めて1年半。現在は週2回のデイサービスとマッサージが楽しみといいます。やさしい家族に支えられながら、今ある一日一日を大切に生きています。
ひとつの時代を生きて

昭和4年、9人兄弟姉妹の一番上として、Tさんは生まれました。結婚後は、娘一人、息子二人のお子さんに恵まれ、ここ埼玉県入間市で家族と暮らしています。
もとはご主人と、カイコを育てて繭をとる「養蚕業」を営んでいました。昔からこの辺りは蚕をやっているところが多くて、蚕がおもな収入源だったと言います。
その後、昭和48年に野菜農家へ転向。枝豆やホウレン草、小松菜など作っていました。
離れた畑に行くため、40歳で運転免許を取得。腰を患うまでの間ご自分で運転して畑に足を運んでいました。しかし今では、畑仕事が出来なくなったTさんの代わりに、東京にいた娘さんが帰ってきて畑を受け継いでいます。
「今あるがままの一日一日を大切に生きています」。/Tさん

「足の痛みはマッサージをしてもらうと楽になるんです」とマッサージの日が待ち遠しい。
家族に支えられ

昔から手先が器用なTさんは、若い頃、地域の婦人会で編み物を習っていました。「みんなで集まって、好きなものを毛糸で編むんです。ずいぶん編んだんですよ」と、素敵なセーターなど見せてくれました。
Tさんの兄弟姉妹たちはみな近くに住んでいて、お盆やお彼岸には、みんな一緒に集まるといいます。Tさんは、いまでも頼もしい一番上のお姉さんです。
「この辺りも昔とだいぶ変わりました。所沢からここ入間に来て60年以上経ちますが、来た時は3件しか家がなかったの。昔からやっている医院も、いまは知らない人ばっかりなの」と言います。
時代の流れとともに、周りは変わっていくけれど、Tさんが築いてきたものを、次の世代の人たちが受け継いでくれる。Tさんにはそんな楽しみがあります。