月刊てあて「特集」

今月の特集

2018年5月28日<105号(2018年5月)>

自分で歩けるその日まで

  • 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ 昭島院 寺田 智洋
  • レポート    /てあて在宅マッサージ 相談員 石川 典子

S・Mさん62歳が、脳梗塞を発症したのは49歳の時。若くして右半身麻痺の後遺症を抱えました。家族にも支えられ、あきらめることなく、13年の歳月を懸命に生きてきました。当時の要介護5から現在では要介護3に。「もう一度歩きたい!」という強い思いが、少しずつ良い方向へと導いています。

動脈瘤を抱えて

動脈瘤を抱えて
マッサージが終わって笑顔いっぱいのSさん。全介助の状態から、在宅マッサージやリハビリなどを通して少しずつ改善してきました。この写真からは、当時の要介護5だったころの面影はもうありません。ご主人のHさんと、担当マッサージ師の寺田智洋。

脳梗塞にはさまざまな症例がありますが、Sさんの場合は、頭の中心に直径3程度の動脈瘤がありました。手術では取り除けなかったため、破裂しないように処置をしたことで、右半身麻痺の後遺症が残りました。
退院当時は要介護4でしたが、その後、要介護5に。後遺症の為に起き上がる事はもちろん、一人では椅子にも座っていられない全介助の状態でした。

「実は、その頃のことはよく覚えていないんです」と幸子さんは笑います。

「実は、その頃のことはよく覚えていないんです」と幸子さんは笑います。
今年一番の出来事!それは、階段昇降機が故障して、介助の方と一緒に、なんと自宅の団地5階まで上ったそうです。
Sさんの目標は、自分で歩いて買い物に行くこと。その笑顔から決して高過ぎる目標ではないことがうかがえます。

13年の歳月の中で、目には見えないけれども、少しずつリハビリの成果が現れて、ある時、座れるようになり、またある時、自分で車椅子に移乗できるようになっていたと言います。
そして、現在は要介護3。気が付けば歩行訓練ができるまでに、足の筋力は回復しています。

新たな目標が生まれ

新たな目標が生まれ
在宅マッサージを始めて7年。マッサージ師とのおしゃべりも楽しみと、拘縮予防のために行っている指相撲の効果も、少しずつ現れてきています。

「何が回復に繋がったのかは分かりません。皆さんの相対的な力で効果が出たのだと思います」とずっと寄り添ってきた夫のHさん。

Sさんが車椅子に移乗できるようになってからは、年に3回は夫婦で車旅行をして全県を走破したといいます。

Sさんが車椅子に移乗できるようになってからは、年に3回は夫婦で車旅行をして全県を走破したといいます。

今年はハワイに行く計画もあり、美味しいものを食べたり、美しい風景を見たりするのが大好きなSさんにとって、リハビリをがんばり続けるパワーにもつながっています。

そして、何よりも嬉しかったのは、娘さんの大学の卒業式、結婚式に参加できたこと。

そして、何よりも嬉しかったのは、娘さんの大学の卒業式、結婚式に参加できたこと。
「歩けるようになったら絶対に負けちゃいますね」と、孫の成長を見られるのもこれからの楽しみのひとつです。

昨年はさらに初孫誕生という幸せな出来事もあり「産まれたばかりの孫に負けないように、歩けるようにならないとね」とSさんにまた新たな目標が生まれました。

以前よりは少し低く見えるようになった「歩く」という壁。

以前よりは少し低く見えるようになった「歩く」という壁。
元気だった頃、キルトの腕前はプロ並み。Sさんは、キルトや編み物が得意で、部屋のソファーや壁には、見事なキルトの大作が…。本場のハワイでキルトを見るのを楽しみにされています。

その向こうに広がる素敵な未来に向かって、一歩ずつゆっくりと前進しています。