月刊てあて「特集」

今月の特集

2020年8月3日<132号(2020年8月)>

いつか元気に庭仕事がしたい

  • 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ長野 山田信太郎
  • レポート/てあて在宅マッサージ長野 相談員 盛田美由紀

少女のような無邪気な笑顔が素敵なM.Uさん。現在77歳です。6年前に脳梗塞を発症し、手足の不自由があることから、介助者がいないと外出や入浴は難しい状態です。しかし、在宅マッサージを始めてからは次第に体も動くようになってきたといいます。いつも明るく朗らかなMさんと毎回、楽しい時間を紡いでいます。

波乱の半生を乗り越えて

波乱の半生を乗り越えて
「マッサージの日が楽しみ」というMさん。コロナが落ち着いたら、まずは駅前の温泉施設に行きたいといいます。そのためにもマッサージでしっかり体調を整えないとと胸をはずませます。娘のAさんと、担当マッサージ師 山田信太郎。

 「今日ね、頭の手術をした市民病院にMRIを撮りに行って、その結果を聞いたの。何ともないって。大丈夫ですよって。それで先生に聞いたの。お酒少しずつやっているんだけど‥いい?って。そしたら大丈夫!って」。
 ようやく大好きなお酒を、少量医師から解禁され、Mさんの顔から笑顔がこぼれます。そんなMさんは、これまで波乱万丈の半生を歩んできました。
 若くして結婚し、2人の娘を授かったものの、離婚。おやき屋の経営、国鉄(現JR)の車内販売でお弁当売りなどをしながら、女手一つで家計を支えてきました。
 その後、再婚。平穏な人生が訪れたかと思いきや、実家のご両親、弟さんが次々と病気になり、Mさんが看取りました。再婚したご主人も10年前に癌で亡くします。
 「大好きな人たち4人を看取り、最後の仕上げが、自分の頭の病気(脳梗塞)だったんです。まあ、これ以上はないというくらい、いろいろな経験をさせてもらいました」といいます。Mさんの苦労は、短い時間では決して語りきれるものではないことが分かります。

「春になると、土の匂いを嗅いで一年が始まるんです」/M.U

「春になると、土の匂いを嗅いで一年が始まるんです」/M.U
在宅マッサージは、病院の医師からの紹介で4年前から始めました。機能訓練や運動、鍼灸も行っています。マッサージ中は、家族の事や大好きな相撲の話で盛り上がり、マッサージ師との会話で身も心もほぐしています。

「はり灸をやってもらえる人が来てくれて本当によかったです」と鍼灸も楽しみにしています。

娘に支えられ

娘に支えられ
年に1回は植木屋が入っているという整えられた庭。「お金がかかる庭なの。だから自分で手入れができたらいいなって‥」。
現在は、下の娘のKさんが草むしりをしてくれています。

 脳梗塞を発症した当時よりもだいぶ良くなってきているとはいえ、一人で外出や入浴は厳しく、平日は娘さんが毎日泊まっています。
 「旦那を置いてきてくれるんだから有り難いですよ。実の娘だから些細なことも何でも頼めます。でも『何でもかんでも用事を言いつけないで』と毎回、怒られてケンカしているんです」と笑います。母娘の絆は小さなケンカでは決してゆるぐことはありません。
 今、Mさんが一番にやりたいこと。それは庭仕事です。「春先、暖かくなると草を取って土の臭いを嗅ぐと、一年の始まりだなって思うんです」。
美しい庭で、思い切り草むしりをするMさんの姿を見ることができる日も、近づいています。