月刊てあて「特集」

今月の特集

2021年3月1日<139号(2021年3月)>

あたたかい希望の光の中で

  • 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ浦和 細田清美
  • レポート/てあて在宅マッサージ相談員 中村博子
あたたかい希望の光の中で
「とにかくじっとしていられない、昔からせっかちなの」と言いながら、お茶を出してくださったり何かと気遣いをしてくださるTさん。明るく元気な人柄のため、お友達も多く、車で買い物なども連れて行ってくれるのでとても助かっているようです。
丸窓写真
「下肢に筋力の低下と拘縮がみられましたがマッサージを行うことで血行も良くなり可動域も拡大してきています」/担当マッサージ師 細田清美

明るく社交的なT.Tさんは、現在75歳。施術中は、ご自身の生い立ちや現役時代の仕事、庭で育てている野菜の話など、いつも楽しいおしゃべりが尽きません。 年前に乳がんを患い、その後も、がんの骨転移・皮膚転移など、苦しい時を乗り越えてきました。今は少しずつ身体の回復に努めながら、日々たくましく過ごしています。

強く生きること

強く生きること
庭には、ブロッコリーやネギなどの冬野菜が元気に育っていました。「プロッコリーはこの間もう採っちゃったよ。このままにしておくとまた出てくるから」とTさん。

両親を早くに亡くしたTさんは、茨城県の山奥で小さな頃から苦労して育ってきました。誰かに心から甘えることができなかったから、自身の力で強く生きていく術を、子供のうちから自然に身に着けました。
大人になってから埼玉県蕨市に転居。その後、お茶漬け屋を開業しました。若い女性が営む店として、そこそこの評判となり、そこで出会ったご主人と結婚。家庭を築き、子育てもしながら、東京の一流ホテルの厨房など、さまざまな所で働き続けてきました。
「昼は百貨店、夜はお店と1日2つの仕事をしていることもありました。料理が好きだったから、働くのはぜんぜん苦になりませんでした」と振り返ります。

「やりたいことはいっぱいあって、足が動いたらきっとじっとしていないでしょうね」/T.T

「やりたいことはいっぱいあって、足が動いたらきっとじっとしていないでしょうね」/T.T
がんの骨転移後、足のむくみや筋力低下の症状がありました。今は下肢を中心に関節可動域の改善を目指してマッサージを行っています。施術後は「身体全体が楽になるの」と言ってくださいます。

太陽のような

太陽のような
立位訓練・歩行訓練も行っています。「一人で自由に歩けるようになったら、また仕事がしたいね」とTさん。

そんな働きもののTさんが乳がんになったのが60歳の時。5年後に下肢に骨転移。その後、皮膚にも転移し、抗がん剤や投薬による治療を続けてきました。
「今ね、コロナが怖いから、病院に行くときは二重にマスクしてゴム手袋して行くの。そしたら、みんな私のカッコウを見て笑うのよ」とTさん。そんなエピソードに、どんな時代になってもTさんらしさを失わない強い生き方がうかがえます。
仕事を離れた今でもTさんを慕ってくる友達は多く、通院や買い物に一緒に連れて行ってくれたり、家に遊びに来てくれたり、季節の食べ物などを送ってくれる友人も多いといいます。
「昔の仕事仲間はみんな定年になっていますが、今でも『元気?』って電話がかかってきます。友達には恵まれましたね」。
淑子さんに感じるのは、春の暖かい太陽のような力強いエネルギー。そんなTさんに、誰もが元気をもらっています。