月刊てあて「特集」

今月の特集

2021年3月30日<140号(2021年4月)>

在宅マッサージにまつわる感動体験!2021

在宅マッサージにまつわる感動体験!2021

今年も恒例となりました「在宅マッサージにまつわる感動体験!2021」の社内コンペティションの公募にたくさんの体験エピソードが寄せられました。今号では、その中から4名のエピソードをお届けします。

「最高の最後の笑顔」

  • てあて在宅マッサージ福島/梅津正和
「最高の最後の笑顔」

 1年半前からご夫婦で訪問マッサージを始められたA様ご夫妻のお話です。小柄な奥様と、原因不明の病で4年前から寝たきりで車椅子生活を送っているご主人の、仲睦まじいお二人です。
 訪問を始めた頃は、横向きになるにも多くの介助が必要な大柄のご主人に対して、小柄な奥様は疲労困憊しておりました。
「お父さんの歩く姿がまた見たいな」
「そうか。頑張って見せてやるよ」
 横向きになる練習・起き上がる練習・立ち上がる練習と、ご主人は約束の為に一生懸命に励みました。そしてついに歩行器で歩く時がやって来ました。ご主人の不安な気持ちは私にも伝わってきました。でも勇気を出して一歩また一歩と力強く歩き始めました。
「お父さん、凄い凄い!歩けた!!」
「どうだい、見たかい!!」
そこにはご主人の誇らしげな顔と、奥様の涙ぐむ顔がありました。私も目頭が熱くなりました。その数か月後、ご主人はご逝去されました。その後奥様は私にお話してくださいました。「最後にお父さんの歩く姿が見れ、その時の笑顔が最高で忘れられないの」と。私も忘れる事ができない素敵な笑顔でした。

「手紙」

  • てあて在宅マッサージ昭島/笠野浩平
「手紙」

 昭島市にお住まいのRさんのお宅での出来事です。施術終了後、Rさんから「バレンタインが近いよね。お返しはいらないからね」と紙袋を頂きました。紙袋の中には丁寧に包装された箱。帰宅後、開封しようとしたら、箱の下から掌サイズの手紙が出てきました。手紙には凄く綺麗な文字で、「いつもありがとうございます。マッサージがお上手で毎週楽しみにしています」と書かれていました。こんなにも文字から気持ちが伝わってきたことは今までになく初めての事でした。
 Rさんは二十年前に脳梗塞を発症、右片麻痺での生活になりました。当初は、言語障害もあり、伝えたいことも伝えられず、利き手が右側だった為、文字も書けない状態だったそうです。いったいどれほどの練習をされたのでしょうか。余程継続して練習しないとここまで綺麗に書けないと思いました。
 あまりにも感動したので、翌週に手紙のお礼を述べ、「すごく綺麗な文字ですね。かなり練習されたのではないでしょうか」とお聞きしたところ、「そんなに練習してないわよ。ただ気持ちを込めて書いたのよ」とおっしゃいました。僕は素直に嬉しくて「こんなにも文字から気持ちが伝わったのは初めてです!これからも全力で頑張りますので宜しくお願いします」と、食い気味に言ってしまいました。Rさんはとてもいい笑顔で「こちらこそよろしくね」とおっしゃってくださいました。
 これからも毎週楽しみに待ってくださる方が一人でも増えるよう、一人一人と真剣に向き合っていきたいと思います。

「私のヌード写真です」

  • てあて在宅マッサージ昭島/松田和吉
 「私のヌード写真です」

 Mさんの施術に伺うようになってから約7年。訪問当初はご主人も健在でしたが、現在94歳になるMさんは、ヘルパーのサービスを受けながらお一人で生活をしています。
 ある日、ベッド横のテーブルの上に小さなアルバムが三冊程置いてあったので、マッサージをしながら何気なく「これはお写真ですか?」と尋ねると、Mさんが「私のヌード写真です」とニコニコしながら答えて下さいました。すぐに冗談と分かったので「拝見してもよろしいですか?」と聞くと「どうぞ見てください」と快く言って下さいました。そこにはワンピース型のレトロな水着を着た笑顔の女性が、海辺に4人並んで写っていました。他にも銀行員の制服を着た若き日のMさんの写真がありました。日付には昭和18年とあります。
戦時下では自由などなく、とても厳しい時代だと思っていました。しかし、Mさんや当時の女性は、厳しい中でも青春を謳歌されていたのだと知り嬉しく思いました。
 患者様の若い頃の写真を見せて頂くと、「この方の人生に私も参加させて頂いているのだ」と強く思います。在宅マッサージをしていなければこの方にお会いすることもなく、ましてや青春時代を知ることもありません。私は日々、とても貴重な出会いをさせて頂いているのだと思います。
 ご縁のあった患者様の人生が少しでも豊かなものになるよう、微力ながらもこれから一軒一軒、お一人お一人を、全力で施術させていただきます。

「魔法の手」

  • てあて在宅マッサージ福島/小島るみ
「魔法の手」

 「何も言ってないのに、辛いところ見つけて楽にしてくれるんだから、先生の手は魔法の手だね!」。恐れ多くもそんな風に仰って頂くことがあります。
 私たち施術者は、手から伝わるお身体の辛さを感じ取り、それを和らげる方向に導きます。
 患者様の多くは戦争や困難を乗り越え、今の世の中の礎を築かれた方々です。私たちは、そんな皆様のお身体に触れ、施術をし、感じ取り、和らいだ時に見せて下さるお身体の変化と、温かい笑顔に日々支えられています。人生の全てが刻み込まれたお身体を施術することで、私たちの手は鍛えられ、育てられています。
 「先生」と呼んで頂くこともありますが、施術者にとっての「先生」は、紛れもなく患者様皆様なのです。「魔法の手」と仰って頂いたこの手は、患者様から贈られた大切な宝物。コロナ禍においても私たちを必要として下さる患者様のもとへ、感染症対策を徹底して、これからもこの手と共にご訪問していきます。