月刊てあて「特集」

今月の特集

2021年4月26日<141号(2021年5月)>

帰るべき場所に帰るために

  • 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ長野 山田信太郎
  • レポート/てあて在宅マッサージ相談員 盛田美由紀
帰るべき場所に帰るために
取材の日とは別日に撮影した写真。施術後、千鳥格子の帽子にデニムの上着を着こなし、愛用の電動車椅子で出掛けるところをハイ!チーズ。てあてでマッサージを始めて5年。「マッサージ中は、いつも気持ちよくて寝てしまうんですよ」と笑うKさん。

担当マッサージ師/山田信太郎
「リハビリや機能訓練にも一生懸命に取り組んでいます。握り込んでいる左の手指も以前と比べよく動くようになって来ました」

M.Kさんは75歳。18年前に脳出血を発症し、左片麻痺の症状が残りました。入院、リハビリを経て、現在は施設に入所し、デイサービスや訪問看護、在宅マッサージを受けつつ体の回復に努めています。現役時代は郵便局長を長く勤めていたKさん。人懐っこい笑顔とユーモア溢れる人柄に多くの人が癒されています。

或る日、突然

或る日、突然
長年続けてきた趣味の苔玉づくり。「もっとやりたい!」と意欲を見せています。

Kさんは、18歳で郵政省に入り、長年郵便局に勤務してきました。長野をはじめ、新潟の各地で課長を務め、若手の育成にも携わっていました。
そんなKさんが脳出血で倒れたのは18年前。須坂郵便局で局長をしている時でした。
「部下の結婚式でスピーチをして席に戻った途端、バタンと倒れてしまったんです」。
救急車で運ばれ長野市内の病院へ。幸いにも、自分で住所や電話番号を救急隊員に伝えることができる軽いものでした。それでも、左片麻痺は残り、現在も不自由な生活が続いています。

「一番いいのはやっぱり自分の家ですよ」/M.K

「一番いいのはやっぱり自分の家ですよ」/M.K
週3回の施術では、主に麻痺で動きの硬くなっている左上下肢の血行促進や筋緊張の緩和を行い、特に左肘の拘縮の緩和を目的に可動域訓練を行っています。

いつか我が家へ

いつか我が家へ
サークル活動では革細工や木彫りを楽しんでいます。レクリエーションで外出もしていましたが、最近はコロナの影響でイベントがないようです。

おしゃれ好きのKさん。取材の日も、赤いシャツに赤いバラのマスクという赤のリンクコーデで私たちを迎えてくれました。季節ごとにさまざまな服を着て、帽子をかぶり、電動の車椅子で散歩も楽しんでいます。 
「調子がいいと町に出るんです。顔なじみがどんどん増えて『オース!』なんて言っちゃって楽しんでいます」と、持ち前の明るさと人懐っこい笑顔で町の人たちともすっかり打ち解けています。
革細工、木彫り、書道、読書など多趣味なKさんですが、今、一番やりたいのは庭仕事と言います。「退院してから、施設で暮らしていますが、やっぱり自分の家が一番ですよ」と言って見せてくれたのは、手入れが行き届いた庭の写真でした。「植物栽培が好きなんです。長年続けてきた苔玉づくりもやりたいですね」。
まもなく季節は初夏。真っ赤なシャクナゲや白いカサブランカが今年もまた咲いて、主の帰宅を待っています。帰るべき場所へいつか帰るために、Kさんは今日もリハビリに励んでいます。