今月の特集
2021年6月1日<142号(2021年6月)>
夢は100歳で大正琴の演奏会
- 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ水戸 北條千鶴
- レポート/てあて在宅マッサージ水戸 粕谷純子
S.Sさんは現在93歳。平成30年に転倒し、左膝蓋骨を骨折。一度は寝たきりになりましたが、辛いリハビリを克服し、自宅に戻ることが出来ました。60歳から始めた大正琴は、今は師範となりたくさんのお弟子さんがいるほどの腕前。100歳での演奏会開催が目標です。
辛いリハビリを乗り越えて
教師一家の6人兄弟の長女として育ったSさん。小学校の教師をしていた時に、高校教師だったご主人と結婚。嫁ぎ先では、慣れない農業という仕事や嫁姑関係に苦労しながらも、家庭を守り、力強く人生を歩んできました。
大正琴を始めたのは、子育てが一段落した60歳からです。師範となり、お弟子さんに慕われ、第二の人生の生きがいとなりました。
そんなSさんが転倒し、左膝蓋骨を骨折したのは、ご主人が逝去され、一人暮らしになってちょうど1年経った平成30年。痛みで足を動かすことができなくなり、一時は寝たきりの状態になってしまいました。少しでも良くなりたいと、主治医の後押しもあり、入院中から病室でもマッサージを継続。老健(介護老人保健施設)へ転所してからも、リハビリに励み続けました。
「曲がらなくなったところを曲げていくのですから、痛かったですよ」。ほとんどの人は痛みに耐えられず、あきらめて車椅子を選んでしまうそうです。しかし、Sさんは、そんな辛いリハビリを乗り越え、歩行器で室内歩行ができるまでになりました。
「辛いリハビリを頑張れたから、自宅に帰ることが出来ました」/S.S
新しい夢に向かって
コロナ禍でお弟子さんとも会えない日々が続き、ここしばらくは大正琴も弾いていませんでした。
そんな中、Sさんは、最近テレビでピアノの先生が100歳記念の発表会をやるというドキュメント番組を見ました。その番組を見たあと、「私にもできるかなと思い、久しぶりに大正琴を部屋に出したんです。頑張れば自宅に戻ることが出来たのだから、頑張れば100歳になった時に、大正琴の演奏会ができるかなって」。
新たな夢に向かい始めたSさんの笑顔が輝いていました。