今月の特集
2021年11月19日<147号(2021年11月)>
新しいALS観で今を生きる
- 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ昭島 松田和吉
- レポート/てあて在宅マッサージ昭島 相談員 佐々木明美
ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、筋肉を動かし、運動をつかさどる神経が侵される病気です。全身の筋肉が弱くなっていくため、進行に合わせて人工呼吸器の装着や胃ろうでの栄養摂取が必要になります。
S.Aさん(71歳)は65歳の時にALSを発症。ですが、ALSとともに笑顔を絶やさずに生きると覚悟を決めました。ブログ、ユーチューブから発信される詩や歌に託したAさんの思いに、誰もが心を揺さぶられます
皆に支えられ
ALSには治療法がなく、かつては発症から3〜4年で死に至ると言われていました。ですが、現在は、人工呼吸器と胃ろうとともに、長期にわたる療養生活が可能な「新しいALS観」が確立されました。
Aさんも「新しいALS観」のもと「しげるーむ」と呼ぶご自身の部屋で、家族をはじめ、介護スタッフ・医療関係者に支えられながら暮らしています。
「私の身になってくれて、私のことをよく理解してくれてありがたいです」と常に周りの人に感謝の気持ちを示します。
「マッサージで、硬くなったところをほぐしてもらうのが楽しみなんです」/S.A
言葉が命の響きとなって
東京都の中学校教員として定年まで勤め、テニス、ダンス、詩や歌の会などを謳歌していました。しかし、ALSに罹患。Aさんの未来図は一気に塗り替えられました。
それでも泣きごとを言うことはなく、日々の生活の様子を文章や写真で、その時々の思いを詩や歌に託してSNSで発信。唾液を持続的に吸い込むメラチューブの振動音を利用した「メラ語」で話せるようになりました。
普通の人の何十倍もの時間をかけて思いを伝えようとするのは、ALSという病気の理解を広めたいため。「人が互いをわかり合うためには言葉が必要なのです。言葉を発することは生きること」だからです。
そして、そこから伝わってくるのは、人は誰もが与えられた命を精一杯生き抜くことが大切なのだということ。Aさんの言葉から、私たちはたくさんの勇気をもらうことができます。