今月の特集
2021年11月30日<148号(2021年12月)>
描くことは生きること
- 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ飯能 難波範茂・福井岳史
- レポート/てあて在宅マッサージ 相談員 志村千秋

「施術開始から4ヶ月。歩行機能の低下にともない、マッサージを始めてからは睡眠障害や食欲も次第に改善され、最近では自宅前を歩く練習を少しずつできるようになりました」(担当マッサージ師より)
N.Iさんは昭和5年生まれの90歳。もともと油絵やヘラブナ釣り・カラオケなど多趣味な方ですが、このコロナ禍で睡眠障害や食欲不振、全身の筋力低下を起こし歩行が困難になりました。在宅マッサージを始めてからは症状も改善され、リハビリへの意欲が出てきました。趣味の油絵も少しずつ再開。大きな目標に向かって再び前進を始めたところです。
寝たきりにならない

Iさんは糖尿病という持病を抱えながら、介護スタッフの力を借りて生活しています。
数カ月前までは、頭が重くて眠れず、眠れないと動けないからお腹も空かず、そんな悪循環から筋力が低下し、歩行が困難になってしまいました。そしてこれをきっかけに、ご本人の希望で在宅マッサージをスタートしました。
「てあてさんにお願いしてから、生活のリズムが非常に良くなってきたと実感しています」とIさん。現在は、だんだん眠れるようになり、食事の量も安定して摂れるようになっています。ですが、まだ足先が動かしにくく、小さな段差でもつまずきやすいため、階段の上り下りの練習も始めました。
「目標は朝昼晩の1日3回ですが、体調と相談しながら行っています。歩けるようになりたいということより、寝たきりにならないことが目標」と言います。
「まだまだ勉強が必要ですが、夢は必ず叶えます」/N.I

生きた証を残したい

体力の回復とともに、気持ちがすっかり前向きになったIさんは、寝たきり防止のために趣味を再開。40代の頃から油絵を習っていたIさんは、これまで静物、風景、肖像画など多くの作品を絵描いてきました。
「今、描きたいのは、他界した妻、母、娘の肖像画です。来年春の完成を目標にしています」。
手間も時間もかかる肖像画の挑戦ですが、すでに部屋の一角に額縁が準備されていて、その決意の固さがうかがえます。
「肖像画は、少しの狂いも許されない難しい絵です。ですが、彼女たちの姿を私の手で残すのが夢となりました。他にも富士山や花を描いて、居間の壁を絵でいっぱいにしたいと思っています」。
生きている間は、絵を描いていたいというIさんにとって、描くことは生きること。描きたいものがある限り、人生は続いていきます。