月刊てあて「特集」

今月の特集

2022年3月30日<152号(2022年4月)>

在宅マッサージにまつわる感動体験!2022②

在宅マッサージにまつわる感動体験!2022②

—— 涙あり、笑いありの感動ストーリー ——

「プレゼント」

  • てあて在宅マッサージ昭島/笠野 浩平
「プレゼント」

 立川市にお住まいのTさんから伺ったお話です。
 今から約20年前、Tさんは旦那様から結婚50年記念に指輪をプレゼントしていただいたそうです。Tさんは「プレゼントなど結婚生活で一度もなく、昔は指輪なんて高価な物は買えなかったから、とても嬉しかったわ」とおっしゃっていました。
 しかし、そのプレゼントから一ヶ月後、旦那様は末期癌にてご逝去されたそうです。その後、Tさんの娘様からTさんへ「お父さんが指輪を買うのを一緒について行ったの。お父さんは自分の命があと僅かなのを知っていたそうなの。自分の命があと少しだと思うから、今までありがとうの気持ちを何か物にしてプレゼントしたいってさ。お父さんは、この事は自分が逝ってからならお母さんに言ってもいいよ」と。
 僕はその事をお聞きし、涙が出そうになりました。悲しい空気感の中、Tさんは「あの指輪が最初で最後のプレゼントだったわね。高価な物じゃなくていいから、もっとプレゼントしてほしかったわね。先生は奥さんに定期的にプレゼントしてる?ちゃんと機嫌をとりなさいね」とおっしゃり、僕は「いえ、独身です。まずはプレゼントを渡す相手がいないです。真剣に婚活を始めます(笑)」と返答し、Tさんは普段よりも大きく笑いながら「そうね。そうだったわね。まずはそこからね」とおっしゃっていました。
 Tさんは寂しいお話、悲しいお話も、最後にはお互いが笑顔になれるようにお話してくださいます。本当に人生の先輩として尊敬できます。まだまだ未熟者の僕です。これからも皆様の笑顔が増えるように、やさしい心とあたたかな手を持ち、これからも日々精進して参ります。

「月刊てあてと伝書鳩」

  • てあて在宅マッサージ飯能/伊藤 寿得
「月刊てあてと伝書鳩」

 私が担当させて頂いている患者様のA様とB様にまつわるお話しです。
 A様は以前、月刊てあてにご登場下さいました。掲載前の取材中に、A様の好きなサミュエル・ウルマンの詩『年を重ねただけでは人は老いない。理想を失った時に初めて老いが来る』をぜひ掲載しましょうということになりました。普段から精力的にリハビリに取り組まれている、頑張り屋のA様らしいなと感じたのを覚えています。
 数ヵ月後、月刊てあてに掲載されたサミュエル・ウルマンの詩を読んだB様は、強い感銘を受けたと仰り、その言葉を書に記して部屋に貼っていました。B様もA様と同じくらいの頑張り屋、感じるものがあったのでしょう。
 そのことをA様に伝えると、A様も随分励まされたようです。それ以来、お互いを気にかける存在となったA様とB様。会ったこともないお二人ですが、私という伝書鳩を通じ、現在もお互いを励ましあっています。これからもお二人の伝書鳩でいたいと感じます。
 見えない力で人を繋げていく、月刊てあての持つパワーに感動した出来事でした。

「LINE友達なんです」

  • てあて在宅マッサージ所沢/佐野 貴志
「LINE友達なんです」

『おはようございます。今日も暑くなるので、水分補給してお仕事頑張ってくださいね』

 私のスマホに届くLINEメッセージの送り主は、少し前にガラケーからスマホに切り替えたT子さん。お嫁さんにLINEの設定をしてもらい「先生、私のボケ防止と指のリハビリのために付きあってね」とお友達になりました。
毎週木曜日の施術が終わった後には、『今日も有難う。おかげさまで楽になりました』。夜には『今日も一日お疲れ様でした。ビール飲んでゆっくり休んで下さい』と、いつしか私の一番のLINE友達になっていました。花が大好きなT子さんに、私も移動の途中などで見つけた花を撮影してLINEを送り返していました。そんな時は可愛いハートマークのスタンプで返信してくるT子さん。

 T子さん、10数年前に脳梗塞を発症し左片麻痺の後遺症と、乳癌で両方の乳房を切除するという満身創痍のお身体です。「てあて」をご利用して十数年、縁あって私は初期から担当を受け持たせていただいていました。
 そんなT子さんとは忘れられないエピソードが一つあります。あれは11年前の3月11日、そう東日本大震災の日でした。 あの日は、新人の女性施術者がT子さんの施術に同行見学した日でした。施術が終わり、私がノートを手にしたその時です。気持ちの悪い揺れが始まり、私は立っていられずにその場にしゃがみ込んでしまいました。と、次の瞬間です。T子さんに近寄り「大丈夫ですよ。安心してください」と肩に手をやる新人の女性施術者。
 あれから何年経っても、事あるごとに「先生は私を見捨てんだからね」と、勿論冗談ですが得意げに話すT子さん。

 残念な知らせがある日突然やってきました。まだまだ残暑が残る8月の終わり、シェアしている同僚施術者から連絡が入りました。入居している施設から直ぐに救急搬送。脳出血を発症し医師からはご家族に「今日、明日が山です」と残酷な宣告があったそうです。
 前の週に私は、いつものように訪問して、いつものように施術して、いつものようにまた来週と言ったばかりなのに…。搬送されて2日目。奇跡は起こらず、T子さんは天国へと旅立ちました。

『また来てくださいね♡』
『もちろんです♡』
スマホに今も残るメッセージ…。いつまでもLINE友達なんです。

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●第151号「在宅マッサージまつわる感動体験!2022」①
●第140号「在宅マッサージまつわる感動体験!2021」
●第128号「在宅マッサージまつわる感動体験!2020」
●第116号「在宅マッサージまつわる感動体験!2019」
も、是非ご覧ください。