今月の特集
2022年8月31日<157号(2022年9月)>
自分でできた!をパワーにかえて
- 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ福島 関美穂・濱田裕一
- レポート/てあて在宅マッサージ 相談員 佐藤浩子
T.Tさん(69歳)が、意識不明で救急搬送されたのは、10年前のことです。一時は寝たきりとなり車椅子生活を送っていましたが、地道な努力を続け、自分でできることを少しずつ増やしてきました。困難を乗り越え、明るく前向きに進むTさんは、今日も心豊かに楽しく暮らしています。
その日は突然に
仕事もプラベートも元気いっぱいに謳歌していたTさんに、その日は突然訪れました。
「原因不明の心機能の低下で救急搬送されて、命をとりとめました。ペースメーカーを埋め込む手術をし、服薬調整で入退院を繰り返しているうちに寝たきりに。手足のしびれが出て呂律が回らなくなり、脳の手術もしました」。
PET検査により、サルコイドーシス(*)という病名が判明。2カ月間のリハビリを経て、なんとか杖歩行できるようになったものの、一時は家族やヘルパーさんに頼っての生活となりました。
5年前からADLを向上させるために始めた在宅マッサージは、現在週3回行っています。「やってもらうと楽になるし、幸せになるよ」とTさんは言います。
悪いことは考えない。少しでも いいことを見つけて楽しみます。/T.T
病気もお友達
退院当初は、しばしば足がもつれて転倒し、1人では起き上れないという悔しい思いをしました。立って座ってを繰り返し練習し、立ち上がれるようになるまで随分かかったと言います。散歩も最初は15分の往復からはじめ、1人で外を歩く恐怖を克服しました。他にも掃除をする、食事を作るなど、『当たり前のことを自分でやれるように』を目標に、10年かけて少しずつできることを増やしてきました。頼めば手伝ってもらえることですが、「自分でできた!」という喜びをエネルギーに変えて、挑戦し続けてきたのです。
Tさんは、いつでも誰に対してもニコニコと笑顔を絶やしません。足の痛みで立っているのもやっと、冷えやしびれが辛くて夜一睡も眠れなくてもです。
「『大変だね』と言われるよりも、『元気でいいね』と言われるほうが嬉しいんです。この病気とは、一生のお友達と思って付き合っていきます!」。
常に明るく前向きなのは、病気に負けないという強い気持ちを持ち続けているからです。
(*)サルコイドーシス…原因不明の多臓器疾患