今月の特集
2023年5月1日<165号(2023年5月)>
自分の力で立って歩きたい
- 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ浦和 井上 豪
- レポート/てあて在宅マッサージ 相談員 中村博子
T.Kさんは、昭和17年生まれの80歳。15歳で長野から集団就職で上京し、「金の卵」として日本の高度成長期を労働で支えてきました。65歳の時に無症候性脳梗塞を発症し、その後、次々に病を患いました。現在も病気による体の不自由はあるものの、奥様に支えられながら希望を持って暮らしています。
金の卵
Tさんは、15歳で親元を離れ集団就職で上京しました。
「金の卵」とは、当時の日本が戦後の経済成長で人手不足となり、地方出身の若者を都市部の企業や町工場、商店がこぞって採用した時代に生まれた言葉です。
Tさんも、まさに「金の卵」の一人でした。
航空会社のプラスチック食器を作る工場で働き始めたものの、ドルのレート変更による不景気で仕事がなくなり、エンジンやコンプレッサを作る工場に転職。その後は事務職に就きました。福島出身の奥様とは、30歳のときに出会い、2人の女の子にも恵まれました。
大きなけがや病気も無く、いたって健康体で定年まで仕事を全うしたTさん。定年後は趣味を楽しもうと計画をしていたところ、体を酷使してきたツケが突然回ってきました。
「目標は歩行器で外をひと周り。休まずに歩きたいです」/T.K
頑張りすぎて
最初の異変は65歳の頃。よくつまずくようになり、手の震えが出てきたのです。検査をしたら無症候性脳梗塞(ラクナ梗塞)と診断され、医師から運動不足を解消するために歩くように言われました。
「それで、頑張って歩いていたら今度は腰痛に。その後、喉に異常が出て、慢性甲状腺炎(橋本病)と診断されました」。
年々、酷くなる下肢の痛みや痺れに悩まされ、ついには歩くことも困難になりました。そこで、以前の職場の同僚から在宅マッサージを教えてもらい、約1年半前からスタート。現在は、歩行器や杖を使用した歩行が安定してきました。
「マッサージを始めてだいぶ動くようになり、おかげさまで助かっています」とTさん。
目標は、奥様の介助は受けずに歩行器で家の周りを一周すること。
再び自分の足で歩きたいという思いを強く持ち、一歩一歩前進しています。