今月の特集
2023年8月30日<169号(2023年9月)>
笑顔と感謝をいつも胸に
- 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ松戸 中山隼一
- レポート/てあて在宅マッサージ 相談員 玉城さや香
M.Kさんは昭和25年生まれの73歳。18年前に2度の脳出血に襲われ、自力で生活することや話すことが困難となりました。ここ10年は病状が落ち着き、奥様や周りの温かい支援を受けながら、穏やかに、時には笑いのある時間を積み重ねています。
景色の変化を感じる
「今日は何回やりますか?」の問いかけに、うれしそうに手を広げて『5』を示してくれます。
Kさんにとって、在宅マッサージの時に行う立位訓練は、自力ではかなわない『立つ』という身体感覚を味わい、いつもと違う位置からの風景を見ることができる喜びの瞬間でもあるのです。
Kさんは、かつて樹脂関係の企業で研究員や工場長を務めるなど、長年にわたり激務の中働いてきました。ところが、心労が重なり体調を崩し、18年前に脳出血で倒れました。その1年前にも軽い脳出血を起こしましたが、2回目は半身不随という重い後遺症が残ってしまいました。
「転勤先の兵庫県明石で倒れ、明石の病院で手術をしました。でも術後の状態がよくなくて。それで病院の反対を押し切って新幹線と救急車で搬送して松戸に転院しました。命がけでした」。
当時の逼迫した状況を振り返って奥様は話します。
「明るく笑顔で暮らしていきたい」
一人じゃない
松戸に戻ってからは、日に日に病状は落ち着きました。しかし、最初の10年くらいは、退院後も敗血症や誤嚥性肺炎などで、1〜2カ月に1回くらいの頻度で入退院を繰り返していました。
「乗り越えてこれたのは、主治医、看護師さん、介護を助けてくれるスタッフの方々、そして息子がいたから。『一人ではない』と思うことができたからです」。
近頃は、奥様の献身的な介護もあって、Kさんの筋力は少しずつ回復してきています。手をギュッと握って意思を示したり、時折り、笑顔を見せたりするようになってきました。
今後の願いは、Kさんの故郷の盛岡に行くこと。その目標の為に笑顔を絶やさず、奥様と二人三脚で進むと心に誓っています。