今月の特集
2024年2月1日<174号(2024年2月)>
一人じゃないから頑張れる
- 担当マッサージ師/てあて在宅マッサージ浦和 松原信也
- レポート/てあて在宅マッサージ 相談員 中村博子

「血行促進を目的としたマッサージをするほか、ストレッチや体操を行い、筋力の維持や関節可動域の拡大に努めています」。担当マッサージ師の松原信也。
筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)は、筋力が徐々に衰えて体が動かせなくなっていく病気です。H.Kさんがその病気を発症したのは2年前、76歳の時でした。一時は寝たきりにもなりましたが、家族の献身的な支えの中で、体力も少しずつ回復。笑顔と希望の中であたたかい家族に囲まれながら穏やかに生活しています。
病は舌から徐々に

「いつも一緒に旅行をするメンバーです。うちは女性が強いんです」。
Kさんご夫妻は、二世帯住宅で長女のMさんご家族と3世代6人で賑やかに暮らしている仲良し家族です。そんな家族の中心で、お喋りが大好きだったHさん。異変に気づいたきっかけは、滑舌が悪くなったことでした。
「ALSと診断された当時は、症状の進行は抑えられていました。ですが、昨年の4月に急に呼吸がうまくできなくなって3カ月入院。人工呼吸器をつけることになりました」。
生きていくために必要な処置とはいえ、話すこと、食べることが不自由になったうえ、重い機械の装着は体へ大きな負担となりました。細い足が浮腫でパンパンになり、歩くこともできなくなってしまいました。
「人の倍おしゃべりしてきたから今は聞く番です」/H.K

温かい手に包まれて

愛犬のコロちゃんは、家族をやさしく見守り、癒しを与えています。
退院後、長女のMさんは長年勤めた教師を退職し介護に専念。夫のSさんが吸引や栄養補給を行うほか、薬剤師、理学療法士の2人のお孫さんも力になり、家族全員でHさんを支えています。
ケアマネジャーの紹介で始めた在宅マッサージでは、次第に筋力や体力も回復し、今では支えられながら歩行の練習もできるようになりました。「体が動けるようになると気持ちがすごく前向きになって、より頑張れるようになりました」と言います。
目標は、昼間だけでも小さい人工呼吸器にして過ごすこと、飲み込みの練習をして、食べられるものを増やすことです。
家族が一丸となり、寄り添い合ったからこそ、奇跡のような日常を取り戻すことができました。
課題や試練は山積みですが、Hさんが確信していることが一つあります。それはいつだって一人ではないということ。共に病と闘うあたたかい手に、いつも包まれています。