月刊てあて「特集」

今月の特集

2024年3月1日<175号(2024年3月)>

在宅マッサージにまつわる感動体験!!2024〈1〉

在宅マッサージにまつわる感動体験!!2024〈1〉

 今年も、「てあて」スタッフたちから、たくさんの感動体験エピソードが寄せられました。
 そこには「やさしい心とあたたかな手」を通して、患者様とふれあい、学び、そして自ら成長する姿が垣間見ることができます。
 月刊てあてでは、その中から、今月〈175号〉と来月〈176号〉の2回にわたってご紹介いたします。

「思いを届ける」

  • てあて在宅マッサージ 福島 /関 美穂
「思いを届ける」

 E様は廃用症候群と認知症により、訪問時は傾眠されていることが多く、声かけにうなずいていただくこともありますが、自ら言葉を発することはほとんどありません。

 訪問を開始して約1ヶ月経った頃。
 娘様より「お母さんが私にマッサージをしてくれたんです! 介助している時に肘のところをそっとマッサージしてくれて、そしたら肘が本当に楽になって。お母さんが先生にマッサージをしてもらって気持ちがいいから、私にもしてくれたのだと思います!」と、娘様は驚きと喜びの表情で伝えてくれました。

 コミュニケーションが難しく、施術に満足いただけているのか探っている中でのことに、私もとても嬉しくなりました。それと同時に、E様はいつも傾眠しているように見えますが、すべてを理解しているのだということがわかりました。
 なぜなら、娘様は介護負担の増加により肘や肩・腰等に痛みを抱えており、訪問時に一緒にマッサージを受けているからです。
 いつも献身的に介護している娘様の身体を労わる気持ちや、感謝の気持ちが現れたものだったのだと思います。
 その、心のこもったお母様の『てあて』は、娘様の痛みを本当に和らげて下さったのでしょう。
 言葉を交わすことは難しくても、きっと「てあて」を通して思いは届くはず。E様の優しい人柄に触れ、これかも誠心誠意、心を込めた施術を行っていきたいと改めて感じた出来事でした。

 硬くなった関節や筋肉が少しでも緩むように。より長くご自宅で娘様と過ごせますように。
 そんな思いが、E様に届きますようにと。


「小人さんが悪戯を」

  • てあて在宅マッサージ 相模原 /畑井 祐子
「小人さんが悪戯を」

 腰痛が辛くて腰を曲げてやっと歩いているYさん。
 「マッサージはその時痛くても後が楽になるのよ」と施術中はいつも明るくおしゃべりを楽しんでいます。

 ある日、Yさんが内緒話をする様に「家には小人さんがいてね」と教えてくれました。Yさんが言うには、どうやら腰の痛みはその小人さんが悪戯をしているからなんだとか。
 「腰に何人もの小人さんがぶら下がっていてね。それで痛くて重くなるの」とYさん。私はいかにも困ったという顔で応えます。
「困った小人さんですね。どうにか小人さんの気を他にそらせないですかね。お菓子でも置いてみますか」。
2人でクスクスと笑います。

 その日の施術では、無事に小人さんの気を他にそらすことに成功したのか、私が帰るときにはYさんの動きが少し良くなっていました。
 その後も度々小人さんの来訪があり、腰にぶら下がる悪戯は続いている様子でした。
 毎週訪問を続け、季節がめぐって秋になる頃には、家から出るのを躊躇していたYさんも少しずつ庭先に行かれるようになりました。
 時にはご主人と家の周囲を散歩したり、簡単な庭仕事の手伝いも出来るようになりました。
 動いた後は腰痛が強く出て難儀されていることもありますが、前向きな心は曇ることなく自分が歩けたことや、仕事が出来たことが何よりも自信になっているように感じます。

 施術を始めて8ヶ月。小人さんの悪戯は以前よりは少なくなっている様子です。


「俺は日本を守った」

  • てあて在宅マッサージ 昭島 /松田 和吉
「俺は日本を守った」

 もう十年以上前になります。
 当時92歳の男性の患者様で、足腰は弱くなっていましたが、しっかりした話し方と、輝きのある眼差しが印象的でした。戦後、ご自身で会社を興し、何十人もの社員を抱える企業に成長させたそうで、普段から堂々とした頼もしさが感じられるTさん。

 戦時中は、機関銃小隊の隊員として最前線で戦っていたそうで、よく当時のお話をされ、仲間達と写した軍服姿の貴重なアルバムも見せていただきました。
 写真は、笑顔でリラックスしているものが多く、写っている一人一人に名前が書きこんであり、共に戦う仲間とは強い絆で結ばれていたのだろうなと感じました。

 Tさんは、息子さん夫婦と同居しており、息子さんから老人ホームへの入所を勧められていました。気丈な方なので「俺は自分の家に住みたい。なんで老人ホームへ入らなくちゃならないんだ」と、常日頃話していました。
 ある日のこと。施術が終わった後、「あの時代は、なんだったのかな…」と、ふとおっしゃったことがありました。
 私は「Tさん世代が苦労して日本を守ってくれたお陰で、今、僕たちがこんなに豊かで平和な時代を過ごすことができているのだと思います」とお伝えしました。
 Tさんは、真っすぐ前を見ながら、自分に語りかけるように言いました。
「そうだ。俺は日本を守ったんだ」
 
 その後、しばらくしてTさんは老人ホームへの入所を希望されました。優しいお嫁さんは、「あんなに入所を嫌がっていたので、家で看るつもりでした。その為に私はヘルパーの資格も取っていたんですよ」と話されていました。
 普段より、Tさんの性格から強さや覚悟を感じていたので、ご自分の意思で決断されたのだと思いました。

 人を守る強さ、覚悟を持って生きてゆけば、さまざまなことを乗り越えていけるのだということを教えてくれたTさん。あの頼もしい姿を今でもふと思い出します。