月刊てあて「特集」

今月の特集

2024年4月1日<176号(2024年4月)>

在宅マッサージにまつわる感動体験!!2024〈2〉

在宅マッサージにまつわる感動体験!!2024〈2〉

 今年も、「てあて」スタッフたちから、日々の業務の中で出会った、涙あり、笑いあり…の心温まる体験エピソードがたくさん寄せられました。
 「やさしい心とあたたかな手」を通して、患者様とふれあい、学び、そして自ら成長する姿が垣間見ることができます。
 月刊てあてでは、先月〈175号〉と、今月〈176号〉の2回にわたってご紹介いたします。


「私、長生きしたいの」

  • てあて在宅マッサージ 所沢 /金光 美穂
「私、長生きしたいの」

 変形性膝関節症・腰椎症と診断を受けている99歳のAさん。訪問したばかりの頃は、腰や膝の痛みが強く、運動に対しては消極的でしたが、この痛みを改善したい、元気でいたいというお気持ちは強く伝わってきました。

 「口だけは元気なの」と、施術中には戦時中の体験や、日本中を転勤し多くの人と出会ったこと、最近の社会情勢など、ユーモアを交えながらさまざまなお話をしてくれます。

 訪問を始めて約一年後。
「運動を続けないと体は動かせなくなってしまうから、毎日頑張ってやっていますよ」と、訪問日以外でもスクワットなどの筋力トレーニングを意欲的に取り組んでいただけるようになりました。
 近頃では、「ここ数年、外を歩いていないでしょう。少し暖かくなったらシルバーカーで家の前を散歩してみたいわ」と、目標を持ちながら日々運動を頑張るAさん。その努力も繋がり、痛みも徐々に軽減していきました。

 そんなある日。
「今年も生きられるかなと思いながら、もう99歳でしょう。おこがましいけど、私、長生きしたいの。だって、世の中面白いじゃない? 
この先も、世界がどうなるか知りたいのよ」。

 患者様の想いをしっかり受けとめ、真摯に向き合い、確実な施術を一つ一つ積み重ねていけば、患者様の心と体は改善に向かって希望が持てるということを、Aさんから教えていただきました。
 もうすぐ100歳。Aさん、これからも、お元気でいるお手伝いをさせてくださいね。


「芋洗い」

  • てあて在宅マッサージ 松戸 /川田 勇次
「芋洗い」

 お話し好きで、少しなまりのあるご高齢のA子さん。
いつも通りに施術をしていると先日、「芋洗いをしてきた」とお話をされました。

 芋洗い…? どこでしてきたのかと伺うと、「病院」とのことでした。
病院で芋洗い? と思いつつ、「どうでしたか?」と伺うと、
「大丈夫だった」と返答があったのです。

 ずっと「芋洗い」と言っていて、どうも会話が噛み合わず、
「病院で芋洗ったんですか?」と聞くと、
「病院で芋洗うかっ!」と鋭いつっこみ。

 言葉をよく聞いてみると、
「芋・洗い」=「イム・アール・アイ」。
お分かりいただいたでしょうか「MRI」。

 そうA子さんは「MRI検査」を受けてきたと報告をしていたのです。
その後、「病院で芋洗わないよね」と2人で大笑い。

  我々の仕事には、大きな感動は決して多くはないけれど、聞き間違いから生まれた患者様との、心もほぐれるエピソードでした。


「また訪問したくなってしまう施設のお話し」

  • てあて在宅マッサージ 水戸 /菊川 満
「また訪問したくなってしまう施設のお話し」

 てあてに勤務して13年。不思議と惹きつけられる職員さんが、今訪問している施設にいます。

 名前も知らないし、お会いすれば笑顔であいさつを交わす程度。でも、ご担当された仕事を黙々と熟されている姿を見ると、なぜかまた、お会いしたい気持ちになるのです。

 その方に会えるのは、施設の玄関を入ってすぐの場所。そこに腰を下ろして無心で、ご家族様が面会に来られた時に使うスリッパを一つ一つ丁寧に雑巾で拭いています。そして、玄関の清掃もすみずみまでしっかりと行っています。

 あいさつの言葉をかけると、私にもきちんとお顔を見て、笑顔であいさつをしてくださいます。
お互い、「今日もお疲れ様です」と。

 ただ、これだけのやりとりですがその方に会うと、なぜか仕事をがんばろうと思い、自分の心の中が浄化されるような不思議な気持ちになるのです。
 そのひたむきに清掃する姿を、いつまでも見ていたい。それがなぜかとても心地いいのです。


「8億円の施術代金」

  • てあて在宅マッサージ 浦和 /細田 清美
「8億円の施術代金」

 私たちの仕事は、決してお金では得られない価値があります。そう、8億円にも勝るものをもらえることがあるのです。

 施設に入居している認知がある患者様とのお話です。
一緒に歩行練習をした後に座ってもらい、「頑張りましたね〜」と声をかけます。
 すると私の手を取り、ニコニコした表情で「ありがとうねぇ、ありがとうねぇ」と何度も何度も言いながら、私の手をさすってくれるのです。そして急に真顔になり、ひそひそ声でこう言いました。
「あのね、階段にお金が置いてあるの。持っていって!8億円!」
近くにいた施設のスタッフがドッと笑います。

 そして私も笑いながら「そんなに持っていったらお金なくなっちゃわない?」と聞くと、その患者様は「良いのよ、持っていって!」と満面の笑顔で言うのです。
 もちろん、そんなお金はどこにもありません。毎回、毎回、訪問する度に同じやりとりを繰り返します。
ですが、その同じやりとりに、私はいつも心が温かくなります。

 もらったものはお金以上に価値あるもの。そして、もらったものを患者様に還元するために、私は今日も施術に向かいます。